タガメの俗称(2017年6月25日)

夜のNHKの番組では

タガメの生態を放映していた。

棚田を舞台にしてたくましく

生きるその姿には心を打たれた

父は岡山県出身で

タガメをちんぽ切りというんやと

教えてくれた

農業用の小さなため池が点在する半分都市部では

タガメをメダカの群れとともに

ときどき見つけていた

腰まで水につかりながら

メダカ取りをしていた頃

もちろんパンツもズボンもはいていた

秘密の釣り場(2017年6月17日)

6月になり気温が上がり
アユ釣りが解禁される頃になると
決まって思い出すことがある

あゆ釣りの名人と言われる男がいた
休みの日
早朝から一人
秘密の釣り場へ出かけていく

大勢の友人が一緒に連れて行ってくれと
懇願するのだが
彼はかたくなに断り続けた
お前らにはまだ早いぞ

8月のある暑い日のこと
日曜日だったので
早朝から一人うきうきとした気分で
秘密の場所へ出かけて行った
そして帰ってきたとき
彼は生きている人ではなかった

川中で転倒し起き上がれず
溺死したのだった
残された妻と息子は嘆いた
お父さん
友だちを連れで行っていれば
あなたは助かったのに

当たらずとも遠からず(2017年6月17日)

父の口癖の一つが
当たらずとも遠からず
だった

小学校5年生の一年間
毎夜毎夜3時間
父から勉強を習っていた

質問されて答えると
しばしば
父はこう言うのだった
当たらずとも遠からず
正解ではないのだよ
しかし
まったくの間違いではない

そこで再び考えをめぐらして
答えを言う
再び
当たらずとも遠からず
そんなやりとりが
何回も続いて
正解へといたるのだった

何度も答えを探しているうちに
思考力が命を帯びたように
いきいきと動き始める
父はまた言うのだった
やっと油がのってきたな
勉強を始めてから
1時間も2時間もすぎて
ようやくにして
本気になるのだった

やる気(2017年6月4日)

どこにあるの?
私のやる気は
探し求めてさすらいの旅
日が暮れ夜が明け
早くも季節はめぐりゆく

先払いのレストランのように
先に見せるもの

先に行動を起こせば
やる気があとからついてくる
そうなれば
しめたもの
やる気がぐいぐいと君を引っ張っていく

やる気ほど誤解されているものはない

去りゆく5月(2017年5月29日)

4月は終わった
6月はまだ来ない
こんな日には
波打ち際で
日が暮れるまで
足をひたして
歩いていよう

夕焼けに空が染まり
水が急に冷たくなる
そんな時刻に
まだあたたかい砂を
はだしで踏んで
歩き続ける
どこまでも
あてもなく

三千世界(2017年5月14日)

20億光年の孤独
だってさ
こおろぎがささやく

そりゃそうだろ
20億光年しか知らなければ
孤独だろさ
ありが答える

オレらときたら
ずっとでかい世界に生きてきた
三千世界なんだぞ
三千世界には孤独なんて
ありやしない
孤独な生き物なんていやしない

母の日(2017年5月14日)

記念日は何のためにあるの
子は母にきいた
忘れるためにあるのよ
母の答えを子は理解できなかった

母亡き後の一人生きる時間
芯棒のないクルマに
乗ったらかくあらん
忘れ去ることに
勤めるありさま

かくて日々は秩序をとりもどし
母の日だけは
安んじて
思いにひたる
きょうの花々
カーネーション

かしこすぎる人(2017年5月13日)

賢すぎる目をしていたら
何をするのもむだに見えてくる
人のなすこと
世の動き
何から何まで
むだづくし

けれども
少し頭がノータリンなら
何もかもが美しく見える
人のなすこと
世の動き
いきいきと
自分もその渦中で
踊りたい