色とりどりの花は美しい
それでも白い花の美しさには
とうていかなわない
一口に白と言っても
色合いの微妙なちがいがあって
それぞれに美しい
ところで
ある男が
恒例の市に行って花を買い求めてきた
毎月21日に開かれる弘法市である
熱心にすすめられて
見事なまでに美しい欄であった
夜は室内に置き
昼間には太陽の光に当て
水やりもほどよくおこなった
ためつながめつ
その美しさに心から満足をおぼえた
妻も同調し
夫婦二人がともに
よい買い物をしたと喜んだ
ところが
ある日、隣の婦人が来て言うのだった
それは本物の花とちがうわよ
造花でしょう
夫婦は驚いた
仔細に見れば本物そっくりの造花だと
わかったのだった
悔しくて悔しくて
本物のにせ物と
つぶやくしかなかった