こわれた椅子(平成25年9月29日)

背もたれの右側のぎぼし(擬宝珠)が折れて

修理もしないでいるうちに何年もすぎた。

クッションは弾力を失ってしまって、

すわり心地がまったくよくない。

つまり、こわれたいす。

無理もない、買ってから30年はたつのだから。

最近、読んだ本の中のひとくさり。

「都市公園を訪れる人々は

座る椅子を決めると、必ず

ほんのわずかでも

動かし位置を定め、

ひと時でも自分の場所と

するのだ」

いろんな場所で

人々がいすに座るとき、

椅子から立つときを

見るともなしに、見ている。

座るときに椅子を動かし、

立つときにも椅子を動かす。

ほんのひと時、自分の体を

預ける椅子にこんにちはと言って

座りる。

立ち去るときには

自分の体を預けた椅子に

さようならと言っているように

思われるのだった。

出会いと別れ。

椅子もまた。