急に春めいた日に
恩師は息をひきとった
中学1年から高校3年生まで
数学を教えてくれた人である
中学生になり
4月のなまあたたかい季節なのに
長ズボン、詰襟、丸刈り、電車通学へと
拘束としかいえない日々が始まった
半ズボン、ランドセル、給食が懐かしく
帰宅すると
昼間の疲れがどっと出るのであった
迎えた初めての数学の試験
最下位の点数
昼に弁当を食べていると
職員室に呼び出された
これから因数分解が始まり
もっとむずかしくなる
しかし今ならまだ間に合う
こういって叱られた
教室にもどり残りの弁当を前にして
涙が流れて食べられなくなった
その日から明けても暮れても
数学の日々が始まった
叱られたのではない
叱ってくれたのだ
叱ってくれたのではない
励ましてくれたのだ
今の自分には恩師の気持ちがわかる