横断歩道

 いつもの通勤の通り道。信号機のある横断歩道が1か所ある。横断歩道といっても、10メートル幅もないような短い横断歩道だ。周囲を見渡して、赤信号でも歩いていく人が多い。そうしたいと思うこともあるけれど、青に変わるのを待つのを習慣にしている。待ち時間は大して長くはないから。
 去年の秋の出来事。朝の通勤のとき、信号が青に変わるのを待っていると偶然知り合いに会った。その人も青に変わるのを待っていた。30年ぶりのことだった。
 赤でも渡る習慣にしていればこれは起きなかったはずだ。よい思い出のある人だったので、1分ほどの待ち時間が偶然に遭遇させてくれたのだとうれしい気持ちになった。

 帰り道にまた思った。あんまり再会したいとは思わない人がいたとして、その人に偶然に信号待ちで会ったとしたら、どんな気持ちになるのだろう。