耳に心地よい詩を書くのが
詩人の仕事ならば
そうするだろう
目に美しいものを歌うのが
詩人ならば
そうするだろう
口当たりのよい文句を
連ねるのが詩であるならば
そうするだろう
暗く哀しい歌を歌わねばならないのなら
そうするだろう
絶望に淵があるのなら
淵に沈み嘆きの歌を
歌わないといけないのなら
そうするだろう
なんという無節操
耳に心地よい詩を書くのが
詩人の仕事ならば
そうするだろう
目に美しいものを歌うのが
詩人ならば
そうするだろう
口当たりのよい文句を
連ねるのが詩であるならば
そうするだろう
暗く哀しい歌を歌わねばならないのなら
そうするだろう
絶望に淵があるのなら
淵に沈み嘆きの歌を
歌わないといけないのなら
そうするだろう
なんという無節操
根拠なき自信だね
と人は嗤う
いいのだ嗤ってくれて
しかし人は知らねばならない
自信に根拠を求めることの結末jを
他方には
根拠なき劣等感とともに
生きる人がいる
当人にとっては
根拠があると言うのだが
いくら言い聞かしても
聞く耳はどこへやら
友だちが転校していくので
ぼくは泣いた
見ていた母は
会うは別れの初めだから
なぐさめにもならない言葉を
言うのだった
何年かしてその友だちと
再会したのだがお互いに
ぎこちない態度で時間がすぎていった
友だちであったあの時間が
二度とは戻らないことに
僕は肩を落とした
中古腕時計の収集が
趣味の男がいた
安物を買い集めてはコレクションを
作り上げるのだった
そんな男が言う
近頃の時計はさっぱり面白くない
本当かどうか
計り知れないのだけれど
物語『モモ』の中では
時間とは心のこと
逢瀬の別れ際に男が時計を見るのが
女にはさびしかった
時計ではなくて
私の目を見てちょうだい
女はいつも言うのだった
目は私の心そのものだから
さあ夕飯の買い物に出かけなくては
腰をあげた母に向かって
お母さん
行かないで
外は暗くて雪が舞い始めてる
ボクはひとりでさびしくなるから
きのうの残り物を食べようよ
私は年老いてしまったから
さあ逝かなくては
お母さん
いかないで
いかないで
ひとりで生きていける
そんな年にはなっていても
ボクには代わりになるような友達もいない
どこまでも続く
果てしない雪原をマフラーを
巻いた母がただひとり歩いていく
遠い所へいってしまう母の
姿がいつまでも見えるのであった
数え年で数えていた時代があった
正月にひとつ年をとる時代があった
そのころ誕生日はどんな日だったのだろう
子を産んだ母にとっては出産の日
出産の日を思い出すのが子の誕生日なのであった
英語を見てごらん
birthday
birthは出産のことだから
birthdayはホントは出産日なのさ
それなのに
birthdayは誕生日と
日本語になってしまった
子にとって
birthdayは母を思う日
自分の日と思ってはいけないよ
秋だから
そして晴れていたから
先祖のことを思うてみた
記録に残る先祖ではなく
弥生時代いや
そのまた昔の大昔の
先祖のことを思うてみた
先史時代 石器時代
衣服はむろんなく極寒極熱のなか
ひもじいままに
大陸を歩きに歩いてこの地に
たどり着いた先祖のことを
その強靭なる精神と身体とを
思うてみた
おしゃべりな詩人がいた
ユーモア 機知 ウィット
あらゆる話題で楽しませてくれた
しかし詩神はとんと降りて来なかった
おしゃべりな詩人は
父が逝くと寡黙になった
時が過ぎて
母が逝くと
もっと寡黙になった
時をおかずはらからが逝くと
語る言葉を失い沈黙した
そうして
詩神は降りて来たのだった
半世紀にわたり読み継がれている本。
大島みち子さんの詩を再録したい。
病院の外に、健康な日を三日下さい。
一日目、私は故郷に飛んで帰りましょう。
そしておじいちゃんの肩をたたいて、
それから母と台所に立ちましょう。
おいしいサラダを作って、父にアツカンを一本つけて、
妹達と楽しい食卓を囲みましょう。
二日目、私は貴方の所へ飛んでいきたい。
貴方と遊びたいなんて言いません。
おへやをお掃除してあげて、
ワイシャツにアイロンをかけてあげて、
おいしいお料理を作ってあげたいの。
そのかわり、お別れの時、
やさしくキスしてネ
三日目、私は一人ぽっちで思い出と遊びます。
そして静かに一日が過ぎたら、
三日間の健康ありがとうと笑って
永遠の別れにつくでしょう

紅白の萩の花
楚々とした可憐な花
名まえに似合わず繁殖力は旺盛
年に2回開花し根は四方八方に広がり
行きついた先で一群れの萩となる
放置されれば数年を経ずして
萩の林に成り代わる