秋の朝(2020年9月15日)

日曜日の朝、遠くへ出かける用があって

まだ早い時間に妻と駅に向かった

プラットフォームには一組の親子らしき人物がベンチに

座っていた

私の診療所に通う女子高校生とその母親だった

ピアノ全国コンクールで優勝経験のある生徒で

年下ながら私の尊敬する人物であった

私の妻もピアニストで

自己紹介しておこうねと声を

かけて、その親子に近づいた

すると妻は

驚くほどの

丁重な言葉と態度で

なにがしの妻でございますと

その親子に挨拶をした。

あとにも先にも

妻のそのような姿を見たのは

なかった

上手だなと妻の演奏を

いつも思い、なんで無名なんだろうと

不思議に思うことがあった

上には上があって

かつまた層の厚いのがピアニストの世界で

きっとその女子高校生の方が

ある面では妻よりも上手なのだと思う

無名のままで終わった妻には

何の嫉妬もなかったものと

思う