真夏の花なのに、今年は咲かなかった。
ふしぎに思っていたら、9月も半ばをすぎてから
思い出したように咲き始めた。
遅刻すまいと懸命に走る中学生のように。
朝、はなびらは真っ白。
ふちから少しずつ色が変わり、
夕方、ピンクに染まっている。
すいは酔。酔いのまわった顔の
ようなはなびらの色。
暗くなるとはなびらは閉じて
まんまるの座布団のようになる。
そして落下,落下、また落花。
たった一日だけの花のいのち。
深夜、見に行った。
さやから白いはなびらが
のぞきかける。
早朝、再び見に行った。
風にゆられて、蝶の羽のように。
花のいのちは短くて。