シェパードのいなくなった町で(平成26年11月12日)

あのシェパードはどこへ連れて行かれたのだろう

獰猛な目と精悍な動きで人を見れば吠えたてた

認知症のお年寄りの家に

2頭のシェパードが飼われていた

その男性は毎日散歩に連れていった

認知症なので

自宅へ帰る道をおぼえていないのに

決まって帰宅を果たすのだった

そのわけを聞くと

犬が道をおぼえているので

帰宅できるのだという

犬に散歩につれていってもらっているようなものだった

 

シェパードはいなくなった

町には小型のかわいい犬が歩くようになった

かわいい顔 かわいい目

 

こうして恐ろしいもの こわいものが消えていく

ゆるキャラがあふれ 鬼の面すらやさしくなった

甘くやさしくささやく声が聞こえてくる

何もかもが砂糖にまぶされて

ソルトレークシティは

シュガーレイクシティに

いつか名前を変える日がやってくるだろう

その町では

真綿に首を絞められるように

甘い声が体にしみこんでいく

おお ハネートラップ

体はもはや自由には動かなくなるのだ