あまりに平凡な題で
だれもが書ける話だ
けれども
入学式がなかったという話なら
かける人はぐんと少なるにちがいない
これから書くのは
入学式がなかった思い出
1968年4月
覚えている人がいるだろう
東大の入学式が中止されたことを
代わりに学科ごとの入学式が行われた
挨拶に立ったのは
政治学の教授の京極純一氏だった
丸い眼鏡をかけ、すでに白髪交じりの
背広姿だった
「もう一度入学試験をしたら君たちの3分の2は
入れ替わる」
続けて
「君たちに求められているのは卓越性の追求なんだ」
今もこの二つの話は忘れられない。