塔の家(平成26年10月26日)

男は

一階あたりは6畳の広さだが

10階建てどころか

もっと高い塔の家に住んでいた

ふだんは1階、

ときどき2階、

たまには3階

そんな住み方だった

4階以上は行ったことがなかった

台風の過ぎた日

あまりに空が美しく

男は

上の階へと昇り始めた

我が家なのだが

知らない空間に目を瞠るうち

だんだん高く高く

下界を見下ろす階に届いた

やめればよかったのだが

さらに高く昇って行った

男は降りることを忘れ

住民は男の存在を忘れた