一日が過ぎてふりかえれば、幸運も不運もともにいくつもあるものだ。きょうの幸運ひとつを思い出してみた。
ここのところ、何年も悩んでいることがあった。それは古紙回収である。月に1回、古紙回収車が町内にやってくる。月初めの月曜日と決められている。「古紙回収ステーション」とその日だけ立札が立てられる場所まで運ぶ。自宅からちょうど50メートルほどの距離がある。新聞や段ボール、雑誌を束ねておいて、運搬する。重さが相当あるので、乗用車にのせて、「古紙回収ステーション」に向かう。
だんだん年齢をとってきたら、こんなに重いものをクルマに積んで、またおろしてという作業がいつかできなくなる。いったいどうしょう? ときどき思い出しては悩むのだった。いっそ、新聞を燃えるゴミに出してしまおうか? 台車を購入するのがいいだろうか?町中で偶然見かけた回収車に「うちのあたりにもきてもらえないだろうか?」と談判もしてみた。解決策がないまま、年月がすぎていた。
きょうはたまたま古紙回収車の来る日だった。いつものように運搬し、やれやれという顔つきで戻ろうとした。そのとき、古紙回収車が到着して、運転手が話しかけてきた。
「どこから持ってくるの?」
「4軒ほど向こうからです」
「通りに面しているの?」
「そうです」
「それなら、うちの前に置いとくといいよ。運んでやるから」
こんなやり取りをした。
あっさりと悩みは解決してしまった。