2月1日の早朝、NHKの番組「小さな旅」が放送された。
成田から銀座までJR成田線に乗って重さ40キロの野菜や
食糧を背に50年以上も行商を続ける85歳の老女と、
その老女を助け、助けられる銀座界隈の住人や通勤者との
触れ合いを描いたものだった。
用事のためJRに乗って東京へ向かいながら、番組のことを
思い出していた。
40キロの荷物こそないけれど、収入を得るために上京する
私のしていることは、たっぷりと心に重荷をしょって、
実は行商にほかならない。
行先ですることは品物を売ることではなく、
研修会に参加し、講演を聴いたり意見を言うことだけれど。
あるいはもっと端的に出稼ぎと言ってもいいくらいだ。
まことに人生は旅。
その中でまた出稼ぎのために旅をする。
東京の空は旅人を見下ろしてゆっくりと暮れていく。
飛ぶ鳥の姿は見えず、鳴き声は聞えなかった。