深夜未明の分娩室(平成26年9月18日)

音が消えてしまったような

深夜未明の分娩室で

しずかにしずかに

ゆっくりとゆっくりと

赤子が産道をくぐって

頭から現れる

全身が外に出ると

声をあげて泣く

泣いているのではない

呼吸しているのだが

あまりに激しい呼吸は泣声になる

そばに二人の婦人がいる

一人はうれしさのあまりおしゃべりが止まらない

もう一人はうれしくて何も言わず涙がほおをつたう

後者は決まって生み終えたばかりの産婦の母である