黒と茶と白
まだらの母猫が前足で
窓ガラスをたたく
山裾の町の音もない夜明け
外は寒かろうが
年中同じ毛をまとった体で
餌をねだる地域猫に
見かねた女主人が
前夜の食べ残しのさかなの
しっぽを与えると
子猫が3匹、すばやく寄り集まる
地域ネコにとって
朝食の始まりは幸福の始まりである
生きることは食べること
こんなにもシンプル
小さな部屋かもしれないが
朝日がさしこんでくる
古びた茶碗だが
そそがれた紅茶の色は美しい
ゆですぎて
半熟卵になりそこねたのだが
卵に向かって文句を言うわけには
いかず眉をしかめて
窓の外を見ると
母猫と目が合う
にっこりとはしてくれないけれど