その人は向こうを向いて立っていた。
背広の肩に雪が降り積もっていた。
正確には雪ではない。雪のようなものだった。
雪のようなものは何か。
それはふけだった。
背広の肩に、雪のように白いふけが
ふりつもっていたのだった。
その人物は誰だったか。
元アメリカ大統領、ケネディ氏。
それを見た人はどう思ったのだろうか。
なんと不潔な人物だろう、と思ったかもしれない。
あるいは
背広のふけをとりはらういとまもないほどの
忙しさなのだろう、と思ったかもしれない。
そう、入浴する時間すらまったくない生活。
そうだったのかもしれない。