除夜の鐘(平成26年12月31日)

小倉山中腹にある古刹では

中年に耳を患い全聾の寺男が

除夜の鐘行事をとりしきる

かがり火をたき、京中心部の明かりを

見下ろし、参拝客がひとつ

ひとつまたひとつと鐘をつく

風雨予報のこの夜に

挙行できるか朝から気をもんでいた

予報どおりに

夕方に降りだした雨

豪雨の夜にもやらねばならぬと

住職が命じた

異常気象が日常になり

天候が人の暮らしを変える

異常気象に適応できる者だけが

生き延びる

適者生存

そのとき

強い者は絶え

弱い者が耐える

弱者こそが生き延びる

小倉山古刹の鐘の声

強者必滅

弱者生存の響きあり