雨脚が弱くなり近所の喫茶店へ向かった
禁煙になったせいで客は少なく
雨のせいでいっそう少なく
空席が目立った
窓際の席に座ると
年配の男が二人でやってきた
「わいらはもう生きる力はないけんね」
「そうやもういらんそんなもん」
「そうはゆうてもわいは雨に弱いわ 生きる力はゼロや」
「わいかてそないや」
「晴れの日に生きる力は誰にもあるもんや
雨の日こそ試されるんや」
いれたてのコーヒーの香りがして
三十の坂をこえたばかりに見えるウエイトレスが
足取り軽くカップを運んできた