庭は狭いのがいい
歴史に残る名園は
広すぎて落ち着かない
猫の額くらいがちょうどいい
一本の樹木
景石がひとつ
苔が少々
後は白い玉砂利
猫がときどきくつろぎに来るような
そんな狭さがいい
もし広い庭なら
春の花が今が盛りと咲きほこり
次には夏の花が力いっぱい咲き続け
そのつらなりでは秋の花が余韻たっぷり咲き乱れ
そのまた次に冬の花が寒風に負けじと咲きこぼれる
一回りすれば
四季を味わえるような
そんなありもしない庭がいい
まことに坪庭こそが理想
二人ならんで腰かけて
ネコ以外ほかには
誰もいない空間で
木を見つめ
石を見つめ
互いの瞳にうつる
雲は流れていく
二人きりの完ぺきな世界