すっかり去っていった夏。まためぐってくる来年の夏。
夏はこれからもくりかえしくりかえし、来ては去り、
来ては去る。
3年前の夏の日、所用で、大阪へ行き、
環状線のとある駅で降りた。
初めて降りる駅だったけれど、駅前風景は
これといって目新しいものはなく、マクドナルドや
セブンイレブンが並んでいた。
私の目を引いた光景があった。
駅の改札口で、何気に人を待っているふうの親子があった。
母親と二人の男の子。小学生の低学年と高学年に
見える背丈と顔つきだった。
電車がプラットフォームに到着し、乗降客が動き、
発車していくのがざわめきで知れた。
改札口に、一人の男性が現れた。
片手に大きなボストンバッグを
さげているほかは目立たない、
ごく普通の様子であった。
その男性が改札口を通り抜けたとたん、
二人の男の子がさっと近づき、
男性の両腕にすがりついた。
「お帰りなさい、お父さん」
二人の男の子は両側から父をはさみ、
顔に笑みを浮かべて、
少し離れて立っていた母親のそばに近づいて行った。
この男の子たちはあまり勉強しない子かも
しれないし、整理整頓が苦手かもしれない。
けれども、おそらくは単身赴任でたまに帰ってくる父親が
大好きなことだけは確かだ。