毎月、その日になると
決まって現われる高齢男性がいた
注文はホットコーヒー二つ
亡妻の遺影をテーブルに立てて
自分の前に1客
写真の前に1客
コーヒを置いてもらうのであった
店員がふしぎに思い尋ねてみると
その店に夫婦連れで
何十回となくコーヒを
のみに来ていたという
その習慣を忘れがたく
一人になった今も
老男性はやってくるのであった
店員は哀れに思い
もらい泣きするだった
冷めてしまったコーヒー1杯を残し
ゆっくりとした動作で
写真立てをしまい、
二人分の支払をして
店を出ていくとき
店員は後ろ姿を見つめていた