夜になって昼間の暑さが去り、涼しくなった。夜が更けて
さらに気温が下がってきた。肌寒いほどだ。
明日から開店する喫茶店の店内を見に行った。
コーヒーカップやガラスのコップ、お盆、湯を注ぐ細口ポットが
整然と棚に並べられている。何とも言えない調和と秩序が
あって、明日、どんな客がこの店に現れるのだろうかと
想像をかきたてられた。しかし、
地域ネコがたいくつそうに入り口にねそべって、
客は誰も来ないかもしれない。
喫茶店の奥は父の居室になっていて、
キャビンと呼んだ方がいいくらいの狭さだ。
2か月の入院生活を終えて、明日、退院することになった。
足はなえて、歩くのもままならないけれど、家が
いいと父は言う。
カレンダーは5月のままだったので、2枚を
めくった。紙の破れる音が思っていたよりも
大きく、室内に響いた。