万事金の世の中(平成28年1月3日)

その頃空は今よりも美しく

水は今よりずっと澄んでいて

海に油が浮かんでいたりはしなかったろう

貨幣がなかったあの頃のこと

 

いったん領主の怒りにふれたならば

生き埋め 火あぶり 水中投棄

命を差し出すことでしか許されなかった

 

貨幣ができて以来

金で解決されるようになった

命を奪われることがなくなった

 

お堅い話で言えば

原始 人類は刑法と刑罰しか知らなかった

そこへ貨幣とともに市民法と金での償いが考え出された

これを進歩と言わずして何と言おう

嗤いたければ嗤うがいい

万事金の世の中に成り果てたと

 

父が殺され 母が殺され 子どもが殺される

そんな時代よりも

たとえ水よごれ 空汚れ 海にごろうと

金で解決される世の中が住みよいと

守銭奴はこんなことを考えながら

元旦の賽銭箱に金を投げ入れた