サイレント サマー(平成25年6月30日)

6月のあいだ、ずっと、夜は静けさに包まれていた。

一昨年までは水をはった田んぼに、カエルが

すみついて、夜になると、ないていた。

その声を聞きながら、眠りに落ちていた。

あのカエルはどこにいったのだろう。

物音のしない夏の

さびしさをかみしめた。

真夜中の喫茶店(平成25年6月30日)

夜になって昼間の暑さが去り、涼しくなった。夜が更けて

さらに気温が下がってきた。肌寒いほどだ。

明日から開店する喫茶店の店内を見に行った。

コーヒーカップやガラスのコップ、お盆、湯を注ぐ細口ポットが

整然と棚に並べられている。何とも言えない調和と秩序が

あって、明日、どんな客がこの店に現れるのだろうかと

想像をかきたてられた。しかし、

地域ネコがたいくつそうに入り口にねそべって、

客は誰も来ないかもしれない。

喫茶店の奥は父の居室になっていて、

キャビンと呼んだ方がいいくらいの狭さだ。

2か月の入院生活を終えて、明日、退院することになった。

足はなえて、歩くのもままならないけれど、家が

いいと父は言う。

カレンダーは5月のままだったので、2枚を

めくった。紙の破れる音が思っていたよりも

大きく、室内に響いた。

グリーフケアのひけつ(平成25年6月6日)

感情移入が大切だと思う。最初の一歩だと思う。

感情移入さえできてしまえば、言い方をかえると

感情移入が起きてしまえば、あとは自然に

進んでいく。

気になっている映画があって、

「カールじいさんの空飛ぶ家」というもの。

最初の10分間がすばらしい。

見る人はカールじいさんに感情移入が起きる。

そうやって初めて、物語の中に入っていくことができる。

他人事ではないのだと。

同窓会(平成25年6月6日)

今夜、東京で、高校の同窓会が開かれている。

遠くだし、仕事中の時間だし、参加はしない。

それでも、思いをはせる。

今は初夏だけれど、夏が来て、夏が去り、

秋が来て、秋が去る。冬が来たら、

葉が散って、木の間からは空がよく見える。

冬の木々から見える空が近くにあるように

高校に通っていた頃の日々が近くに感じられる。

つい昨日のことのように思い出される。