4月は終わった
6月はまだ来ない
こんな日には
波打ち際で
日が暮れるまで
足をひたして
歩いていよう
夕焼けに空が染まり
水が急に冷たくなる
そんな時刻に
まだあたたかい砂を
はだしで踏んで
歩き続ける
どこまでも
あてもなく
4月は終わった
6月はまだ来ない
こんな日には
波打ち際で
日が暮れるまで
足をひたして
歩いていよう
夕焼けに空が染まり
水が急に冷たくなる
そんな時刻に
まだあたたかい砂を
はだしで踏んで
歩き続ける
どこまでも
あてもなく
赤い花
父にあげよう
白い花
母にあげよう
20億光年の孤独
だってさ
こおろぎがささやく
そりゃそうだろ
20億光年しか知らなければ
孤独だろさ
ありが答える
オレらときたら
ずっとでかい世界に生きてきた
三千世界なんだぞ
三千世界には孤独なんて
ありやしない
孤独な生き物なんていやしない
記念日は何のためにあるの
子は母にきいた
忘れるためにあるのよ
母の答えを子は理解できなかった
母亡き後の一人生きる時間
芯棒のないクルマに
乗ったらかくあらん
忘れ去ることに
勤めるありさま
かくて日々は秩序をとりもどし
母の日だけは
安んじて
思いにひたる
きょうの花々
カーネーション
賢すぎる目をしていたら
何をするのもむだに見えてくる
人のなすこと
世の動き
何から何まで
むだばかり
けれど
少し頭がノータリンなら
何もかもが美しく見える
自然の移ろい
世の動き
人のなすことすべてが
いきいきと
自分もその渦中で
踊りたい
その渦中に
融けていきたい
一人の男がいた
すばらしい演奏だったな
途中で眠気がさしたけど
最後まで聞き飽きなかった
満足して男はホールを
後にした
もう一人の男がいた
ちっとも
眠れなかった
一晩中
こんな夜もあるもんさ
男はつらい朝を迎えて
ホールを後にした
一人目の男は府民ホールに
二人目の男は不眠ホールに
ときおり
足を運ぶのだった
月日は流れ去り
早くも時は5月
草いきれに夏の香りがただよう
3日 お経のごとくに憲法を読み
4日 庭に落とされたネコのフンの始末
5日 我らが手を離れたこどもは今いずこ
かくて連休は終わりぬ
観光地の真ん中に暮らしていると
行楽客から道を訊かれることしばしば
今年からは教えないことにした
知っていても知りませんですませてしまう
なんて意地悪なんだろう
しかしこれにはわけがある
考えているのだ
道を歩くときはただ歩いているのではない
思考の時間なのだ
思考をさまたげる不意の質問には
知らないと答えて
思考を続ける
道くらい調べぬいてから来いよな
やたらと人にきくもんじゃないぞ
地元民は忙しいのだぞ
しかし行楽客はただききたいのではなく
未知の土地で誰かと
触れあいたいのだ
ともに生きてここにいるあなたとわたし
そうだね
人のぬくもりがほしいのだろうな
人の往来の多いときに
こんな表現がある
街道を行き交う人々の
姿がよみがえってくるような
いにしえ言葉だ
京都の観光地は
どこも人の往来が
かまびすしい
錦小路もまた同じ
食べ歩きにスマホ歩きが
加わり
さらに幼児も老人も
左右の店に目を光らせる
なんぞうまいものはないかいな
「お客様の手に渡ったとたん、新車でなくなります」
販売員の言葉が耳に残った
そうだ
今、クルマ販売店を出たばかりだが
もう中古車だという
そうするといつ新車に乗ったことになるのだろう
運転席の男の脳裏をかすめる
新築マンションやら新築戸建て
住み着いたとたん
中古マンションやら中古物件になるのだ
新調した背広だって
袖を通したとたん
古着になりはてる