つばめはなぜ急ぐ?

 とうとう見つけた。巣の中から顔をのぞかせているのが見つかった。写したものを下の方にのせてある。できることなら親つばめが餌を食べさせている場面をとりたかったけれど、あまりにすばやさにカメラをかばんから取り出した時には、すでにどこかへ飛んで行った。

  ネット検索してみると、ひなが巣立つまでの写真をのせてあるホームページを見つけて、今まで知らなかったことが明らかになった。つばめの巣にはふつう、親つばめは暮さない。巣にいるのはヒナだけなのだった。親つばめはどこか離れたところの電線か何かにつかまって、夜を過ごすのだそうだ。

  親つばめは最初につがいを作り、交尾するのだと思う。やがてメスつばめが妊娠する。急いでつがいは巣を作る。やがてメスが卵を産む。ひながかえり、父さんつばめと母さんつばめが協力して餌を運ぶ。つがいを作る時からひながかえる時まで、おそらく短い時日なのだろう。こういう順番を考えてみたけれど、ほんとうはどうなのだろうか?

  一番はじめに巣を作り、そのあとで、つがいを作るようなことはしないと思うのだ。人間ならいざ知らず、最初に巣を確保しておいてから、相手を探すようなことをつばめはしないにちがいない。相手と交尾してしまったから、卵を産む前に巣をせっせと作っているのだと考える方が、当たっているような気がする。

  人間だって似たところがある。できちゃった婚という代わりに、つばめ婚と言ってみるのはどうだろう?

ツバメは急ぐ

 毎年、毎年のことで見なれた光景に、突如として、心をゆさぶられることがある。

つばめが足元すれすれの地面を飛んでいく。空をすべるように飛ぶ。滑空ということばがにつかわしい。元々が小型の鳥だから、飛ぶ速度が速くなければ、大型の鳥や動物の餌食になってしまうはずだ。そうならないために、早く飛ぶことをおぼえた。とまあ、こんな想像をしてみる。

  巣を作る場所は決まって深い軒の下だ。巣の材料は枯れた木の枝だとか、ともかく、植物系のものである。どこで見つけるのだろう? あの速度で滑空しながら、たえまなく、捜し求めているのだろう。一回に運べる分量はわずかなものだから、何度も何度も、巣と往復しているにちがいない。

  まことにけなげな鳥だ。ただひな鳥を孵す(かえす)ためだけに、あれだけの働きをしているのだから。滞在期間は限られているうえ、卵をうみ、育てる期間もわずかしかない。
だから、つばめは急がなければならない。

  巣を作り、卵をうみ、ひなを育て、ひな鳥とともに、海を渡っていく。そういうように脳にプログラムが設定されていて、そのプログラムどおりに行動しているわけだけれども、どこに巣を設営するのか? どこで巣の材料をみつけるのか? その場その場で思考しているはずだ。ある日をさかいに巣を捨てて、大群となって、海を渡る。それを指揮している鳥がいるにちがいない。それにしても、きょうこの日に飛び立つ、その合図はどうやって交わされているのだろう?

  ひなにえさを与えている場面はときどき、写真などで見る事ができる。親鳥がひな鳥に餌をやる。ひどく当然の、そして自然の行為だ。食べたい、強くなりたいというひな鳥の本能と育ててやりたい、養ってやりたいという親鳥の本能は、遠い昔にたもとをわかって、異なる進化の道を歩んできた私たちにも共通のものがある。

  デジカメを片手にあちらこちらと歩く。つばめの巣はないか? こう思っていると案外に見つけられない。やはり、写真にとりたいというこちらの欲があるために、かえって、見つけられないのだろう。かといって、何気なく歩いていて巣を見つけることがあり、そういうときに限って、デジカメを持っていない。

  来年もあることだし、と思うのがよさそうだ。