満ち満ちて(平成27年4月19日)

目覚めているのか眠っているのか

わからぬままに土曜日の夜が明けて

カーテンの向こうには

どんよりと空が広がり

朝なのか昼間なのかわからぬままに

日曜日の一日が始まった

ちょっとこわそうな顔の男が

行く手に道行く私を待っており

「〇〇です」と名のられてびっくり

片手にたばこを持った

旧知の人物であった

病院の外出許可をもらって

道を歩いていたのだった

「いいズボンをはいてますね」と

私のかなりよれたズボンをほめてくれた

なんだかとてもうれしくなり

彼がこれから帰っていくのは何十年と暮らす精神病院の一室

自由なはずの自分が彼になぐさめられるとは

元気そうですねと言うと

あほは元気なんですよと冗談が返ってきた

昼間なのか夕方なのかわからぬままに

日暮れようとするなか

ゆっくりと自転車に乗っていると

旧知のご老人から

「自転車の後輪の空気が抜けてます

このまま坂道を昇るのはえらいでっせ」

と声がかかった

タイヤに気がつかないほど私にはとらわれていることが

あったのでった

なんだかその親切がとてもうれしくて

自転車を降りて押して歩き

空気入れでさっそくタイヤを満たした

満たされたのは私の心もであった

 

 

夜桜(平成27年4月11日)

人影が少なくなった夜の公園

寄り添って歩く二つの影

休日もなく遅い時間まで

働くので

昼間の光を浴びた開花を

見ることができないのだった

来年は日当たりのいい時間に

来たいね

いつかこどもが産まれたら

頭に風よけの帽子をかぶらせて

3人でお花見に来たいね

 

月明かり 春の夜寒の 桜かな

蕪村だったら

名月に 春や夜寒の 桜かな

と詠むのだろうか

 

 

 

 

 

雨天決行(平成27年4月5日)

雨の多かった2月と3月

4月もまた雨が多そうな気配

気象が変わってしまったのだ

桜花は満開の日曜なのに雨

花見の予定が雨天中止

公園を歩く人影もまばらに

花にとっては咲くなら今しかない

そうなのだ

花はいつも雨天決行なのである

そして雨天結構なのである