きんもくせいと空(2020年10月18日)

いつの間にか

キンモクセイは出世した。

昔々のこと

元々は便所のそばに植えられる

雑木だったのだのに

今は愛でられる木になった

キンモクセイの香りが

漂う日に

青い空を見上げている人がいた

その人が逝って早二年

今年の開花は遅く

10月中旬になった

そのぶん 花のつきはよく

一面のオレンジの海のようだ

今日という日に

青い空を見上げて

キンモクセイの香りをかぎながら

亡妻を懐かしむ

キンモクセイは二度咲きすることを

誰か知っているだろうか

甦れ

妻よ

ものは言いよう(2020年10月16日)

映画館が映画館だった頃

シネコンというものがまだなかった頃

一人の女子高校生が映画館へ一人で

映画を見に行った

隣の席の男が彼女の膝に

手を伸ばしてきた

彼女は言った

おじさん

そんなことしてたら

痴漢と間違えれるで

男は手をひっこめた

もしこの女の子が

痴漢や

助けて

と騒ぐこともできただろう

この女の子は

冷静だった

そして

賢かった

短い秋(2020年10月14日)

何か特別にいいことがあったわけではない

なにしろ

コロナだからね

そんな夏と

別れはさびしく

夏は立ち去りかねている

酔芙蓉が朝に花を咲かせている

なかなか来ない秋を

待ちわびて

ようやく出会った秋

キンモクセイの香り

今年は二度咲きになりそうにない。

無洗米(2020年10月14日)

娘は関東に

私は関西に

東と西に離れ離れ

結ぶのは LINE

日中はまだ暑いくらいの

初秋の日に

こんなやりとり

「そういえば そろそろお米がなくなる」

お米というのは3か月ほど前に

ふるさと納税で寄付した自治体から

送られてきた米のこと

「そいじゃあ また寄付してお米を

送ろうか」

「無洗米がいいな

 冬は研ぐのが冷たいから」

そのあと ふるさと納税サイトで無洗米を探し

よさそうな自治体に寄付をした

コロナ時代 愛の作法(2020年9月26日)

マスクをつけるのが標準の時代なので

愛の作法も変わってきた

マスクを外すことが

サインとなった

愛ある者同士のあいだでは

マスクを外す

じゃあ

マスクを外そうか

これが親密の言葉になった

愛の作法がひとつふえたわけで

歓迎したい

withコロナ(2020年9月26日)

コロナと共生するのだという

共生というなら

双方に何かしらの得があるときに

言うのではなかったの?

一方だけが得するときには

共生とは言わないんじゃないかな

それでも

with コロナだと人は言う

天にあるコロナが人を支配しているのだから

under コロナ

こういってほしいものだ

ルンバ(2020年9月25日)

名前がおもしろくて

忘れられない

英語では

roomba

roomに

baがついて

roomba

もし寄付を受ける団体を

作るなら

名前は何にしよう

キフミーがいいな

キスミー or キフミー

整理のしかた(2020年9月22日)

紙類、郵便物、雑誌、その他にもいろんな物が

テーブルに所狭しと並んでいて、片付けに困っていた

ふと思いついた

とりあえず、A4サイズの箱に入れてみようと

小さな紙はファイルにはさんで

全部を箱に収めてみた

するとどうだろう

机の上がかたづいた

なんだ

こんなに広かったんだ

遠足の幼稚園児(2020年9月16日)

すっかり観光客の姿が見えなくなった京都

人出が減って寂しいくらいだ

オーバーツーリズムだったあの頃が

かえってなつかしい

遠足にきている幼稚園児の一団を見ている

どこか遠いところから来たとおぼしき

中年女性がいた

涙ぐんでいるような

喜びを

浮かべているような表情で

私も同じ気持ちだったのだろう

ハニージューメロン(2020年9月15日)

メロンの季節が過ぎていく

網目模様のメロンとはちがって

ハニージューメロンという品種がある

負けず劣らず、美味しいそうだ

今年は食べなかった

来年まで待ってみよう

ハニーは蜂蜜、いうまでもないけれど

米国では20歳前後の若さあふれる女性に

年配の女性が「ハニー」と声をかけるのだという

自分たちにもあんな日があったのだと

おそらくは懐かしみながら、

今まさに咲き競うような若い娘に

「ハニー」と呼びかける

国によらず、そういうことはよくあるようだ

今は遠くに行ってしまったわが娘も

どこそこでおばちゃんに声をかけられた

という話を聞かせてくれていた

朝のしたくをしながら

ふと娘を思い出した