これほど有名な映画を見たのは
最近のこと
そうは言っても父が生前のこと
「初めて見るなあ」と言うと
父はこう言った
「おまえは勉強に忙しかったから
見るひまがなかったんやな」
憐れむかのような口調で
実際いつも追われるかのように
勉強していた
頭のいい人なら短い時間ですむものを
グレゴリー・ぺっくはいい俳優だな
ほんとうに
王妃に惚れていたにちがいない
演技ならああはできないな
これほど有名な映画を見たのは
最近のこと
そうは言っても父が生前のこと
「初めて見るなあ」と言うと
父はこう言った
「おまえは勉強に忙しかったから
見るひまがなかったんやな」
憐れむかのような口調で
実際いつも追われるかのように
勉強していた
頭のいい人なら短い時間ですむものを
グレゴリー・ぺっくはいい俳優だな
ほんとうに
王妃に惚れていたにちがいない
演技ならああはできないな
空高く羽をうち舞うオオワシは言う
空を飛べることさ
海を深く浅く泳ぐ魚は言う
海を泳げることさ
地上を歩き回るヒトは言う
どこまでも遠く歩けることさ
頭は重く胃も重く
つらい朝を迎えた
ちょっと身の置き所がない感じで
庭の落ち葉集めをすることにした
10月の台風が杉を揺さぶり
枯れた葉を大量に落としたのだった
作業をしては一休み
一休みしては作業を
繰り返すうちに夕方が来た
ようやく頭や胃が普通に戻ったのだった
島根県松江市で開かれる学会に出席することになった
新幹線で京都から岡山へ
特急で岡山から松江へ
どうってことない時間と距離なのに
頭痛がだんだん強まって
帰り道では頂点に達した
乗り物酔いは苦しいものである
とくに特急に乗ると
決まって起きる
こんなわけで
京都から特急に乗って行くところは
天橋立も金沢も和歌山も
二の足をふんでしまう
台風のあと
青空に雲がくっきりと浮かぶ
風とともに
とある男が舞い下りて
こんなセリフを言い捨てて
また風とともに失せていった
背が高いだって
それがどうした
背が低いだって
それがどうした
はげてる
ふとってる
目が小さい
それがどうした
そういう問題じゃなくて
じゃあ
何なのさ
力をつくして生きること
力のかぎり生きること
気分が沈んでいく
ものうい空の下
どうでもいいことに
時間をさくに限る
なぜか
studio
という単語が気になり
辞書をめくる
study
student
みな同類の言葉であると
辞書は言う
英語もドイツ語もイタリア語も
studioを
使うんだよ
風は神がおこすものと
信仰されていたころ
雷もまた神がおこすものと
信仰されていた
いつしか信仰が薄れゆき
木枯らしが数えられるものとなり
下界の現象とみなされる
本当は今も神が風をつかさどる
道端を
庭の片隅を
吹き抜けて現われわたる
今朝の青空
木枯らし1号の吹いた今朝
神がいたるところに満ち満ちていた
あれがほしい
これがほしい
そんな貪欲さはないつもり
けれど
愛されたい
好かれたい
そんな貪欲さがわたしの中には
ある
それが夜ごと日ごとに
襲いかかる
人ってみんなこんなだろうか
学校へ行くと
天真爛漫な生徒たちに
見抜かれてしまう
一日
家にいて
飼い猫とじゃれていたい
珍しく映画を映画館で見た
関ヶ原
画面がどの場面も美しく
それだけでも十分満足した
ことに関ヶ原のススキの群生の
間を馬でかけるシーン
ところが
俳優の早口がこれはいけないと
思った
何を言っているのか
はっきりとはわからない
道理で評判にもならず
客席は人の姿がまばらである
石田光成の生涯を描いた内容で
知らないことが多かった
ひとつ発見したことがある
それは
大名というのは一種の軍事政権であること
つまり
軍人が民衆を統治しているのである
日本史では
こんな言い方はしなかった
けれど
どう考えても
織田、豊臣、徳川
軍事政権そのものである
いいとか悪いとかは
わからない
けれども確かなことは
そういう軍事政権が日本を統治していたから
欧米の進出を阻み
独立を維持できたこと
中米、南米では原住民は全滅させられた
日本はそうならなかったのは
ひとえに軍事政権のおかげである
なぜか肖という字が気になって
肖という字はどんな意味なんだろう
消えるという字に含まれる
しかもサンズイが付けられている
不肖の息子と言われるときには
不がついて否定されるのだから
肖はきっといい意味なんだ
削るとなると
右側が刀
とやかく言わないで
白川静を見てみたら
肖は似るだって
だからそっくりに描けば肖像画なんだ
不肖の息子は親にちっとも似ていないこどものこと