山椒太夫に捕えられた
安寿と厨子王は勤めを命じられた
安寿は川へ行き水をくみ
厨子王は山へ行き柴を刈り
水で重たくなった桶を運ぶのは
足がよろけたことだろう
柴の束を背に負うのは
背骨が折れそうだったことだろう
比べものにはならないけれど
彼らの苦しさよりは
ずっとましだ
こんなことを自分に言い聞かせて
励む人があちらにもこちらにも
その数は無数
山椒太夫に捕えられた
安寿と厨子王は勤めを命じられた
安寿は川へ行き水をくみ
厨子王は山へ行き柴を刈り
水で重たくなった桶を運ぶのは
足がよろけたことだろう
柴の束を背に負うのは
背骨が折れそうだったことだろう
比べものにはならないけれど
彼らの苦しさよりは
ずっとましだ
こんなことを自分に言い聞かせて
励む人があちらにもこちらにも
その数は無数
6月になり気温が上がり
アユ釣りが解禁される頃になると
決まって思い出すことがある
あゆ釣りの名人と言われる男がいた
休みの日
早朝から一人
秘密の釣り場へ出かけていく
大勢の友人が一緒に連れて行ってくれと
懇願するのだが
彼はかたくなに断り続けた
お前らにはまだ早いぞ
8月のある暑い日のこと
日曜日だったので
早朝から一人うきうきとした気分で
秘密の場所へ出かけて行った
そして帰ってきたとき
彼は生きている人ではなかった
川中で転倒し起き上がれず
溺死したのだった
残された妻と息子は嘆いた
お父さん
友だちを連れで行っていれば
あなたは助かったのに
父の口癖の一つが
当たらずとも遠からず
だった
小学校5年生の一年間
毎夜毎夜3時間
父から勉強を習っていた
質問されて答えると
しばしば
父はこう言うのだった
当たらずとも遠からず
正解ではないのだよ
しかし
まったくの間違いではない
そこで再び考えをめぐらして
答えを言う
再び
当たらずとも遠からず
そんなやりとりが
何回も続いて
正解へといたるのだった
何度も答えを探しているうちに
思考力が命を帯びたように
いきいきと動き始める
父はまた言うのだった
やっと油がのってきたな
勉強を始めてから
1時間も2時間もすぎて
ようやくにして
本気になるのだった
6月22日(木)は臨時休診といたします。
どこにあるの?
私のやる気は
探し求めてさすらいの旅
日が暮れ夜が明け
早くも季節はめぐりゆく
先払いのレストランのように
先に見せるもの
先に行動を起こせば
やる気があとからついてくる
そうなれば
しめたもの
やる気がぐいぐいと君を引っ張っていく
やる気ほど誤解されているものはない
4月は終わった
6月はまだ来ない
こんな日には
波打ち際で
日が暮れるまで
足をひたして
歩いていよう
夕焼けに空が染まり
水が急に冷たくなる
そんな時刻に
まだあたたかい砂を
はだしで踏んで
歩き続ける
どこまでも
あてもなく
20億光年の孤独
だってさ
こおろぎがささやく
そりゃそうだろ
20億光年しか知らなければ
孤独だろさ
ありが答える
オレらときたら
ずっとでかい世界に生きてきた
三千世界なんだぞ
三千世界には孤独なんて
ありやしない
孤独な生き物なんていやしない
記念日は何のためにあるの
子は母にきいた
忘れるためにあるのよ
母の答えを子は理解できなかった
母亡き後の一人生きる時間
芯棒のないクルマに
乗ったらかくあらん
忘れ去ることに
勤めるありさま
かくて日々は秩序をとりもどし
母の日だけは
安んじて
思いにひたる
きょうの花々
カーネーション
賢すぎる目をしていたら
何をするのもむだに見えてくる
人のなすこと
世の動き
何から何まで
むだばかり
けれど
少し頭がノータリンなら
何もかもが美しく見える
自然の移ろい
世の動き
人のなすことすべてが
いきいきと
自分もその渦中で
踊りたい
その渦中に
融けていきたい
一人の男がいた
すばらしい演奏だったな
途中で眠気がさしたけど
最後まで聞き飽きなかった
満足して男はホールを
後にした
もう一人の男がいた
ちっとも
眠れなかった
一晩中
こんな夜もあるもんさ
男はつらい朝を迎えて
ホールを後にした
一人目の男は府民ホールに
二人目の男は不眠ホールに
ときおり
足を運ぶのだった