今も昔も台風は変わらない
8月 9月 ときに10月
列島を海上から陸上へと
南から北へと
西から東へと
突き進む
圧倒的な馬力だ
昔 むかし こどもの頃
無邪気だったから いや無責任だから
無責任だから いや責任は免除だから
台風を楽しみにしていればよかった
降りしきる雨
増水する川
水没する道路
停電
ろうそくの明かりが楽しくて
学校は休み
兄妹で遊んでいればよかった
台風一過
空の青さが目にしみた
海浜を見に行った
波はまだ荒々しく
流木とそれを拾う大人の姿
浣腸までが落ちていたよ
今も昔も台風は変わらない
8月 9月 ときに10月
列島を海上から陸上へと
南から北へと
西から東へと
突き進む
圧倒的な馬力だ
昔 むかし こどもの頃
無邪気だったから いや無責任だから
無責任だから いや責任は免除だから
台風を楽しみにしていればよかった
降りしきる雨
増水する川
水没する道路
停電
ろうそくの明かりが楽しくて
学校は休み
兄妹で遊んでいればよかった
台風一過
空の青さが目にしみた
海浜を見に行った
波はまだ荒々しく
流木とそれを拾う大人の姿
浣腸までが落ちていたよ
ふらんすにあこがれ
アーベーセーしか知らずに
渡仏した男がいた
知り合ったフランス田舎出の娘と
結婚し山がちの村に暮らした
羊を飼い牛を飼い小麦を育て
やがて生まれた子どもが3人
農夫になるよう育てた
村の会合に出席し祭りに参加し
フランス人になっていった
折からのツーリズム そんな村にも
日本の中年夫婦が村のホテルに
宿泊した
声をかけられたのだが
日本語は完ぺきに忘却していた
見た目にもフランス男になりきり
日本人の面影は何もなかった
祖国など念頭になく
ただひたすらに異国の旅人を
もてなすのだった
勝敗は時の運
どの競技もどの選手も接戦だ
たまたまの金メダル
たまたまのメダルなし
もしももう一回決勝戦をすれば
勝ったかもしれない
負けたかもしれない
勝敗は時の運
日曜の夜になると
明日は月曜日
当たり前だ
けれど
行先がなんと中学校の教室だとしたら
かまうことはない
断然として登校するだろう
持ち物は何もなく
せめて体だけでもと駆けつけるだろう
駆けつけてみれば
なんということ
元のままのクラスの生徒がそろっているではないか
すっぽりと抜け落ちた時間
明日から中学生だって
やれるんだ
5月黄金週間から7月海の日まで祝日はない
うるわしの5月が過ぎ去ると梅雨の季節が到来する
梅雨の季節の終わりとともに炎暑の夏が居座る
一年のうちで気候的に苛酷な時期に
祝日のない時期が一致する
それはそれとして 夏の到来は夏休み気分にさせてくれる
気分だけは夏休みだ
義務というものが免除されていたこどもの頃
義務が満載のおとなになってからの日々
それはそれとして 夏の到来は夏休み気分にさせてくれる
登る山 泳ぐ川 船を出す海
手を伸ばせば容易にとどく距離にある
想像せずにはいられない
これは私の夏だから
これが最初の夏であるかのように
これが最後の夏であるかのように
味わい尽くさなければならない
惰眠の底へ落ちていかないように
目を見開いていなければならない
いつまでも いつもでも
空高く輝く陽が あたかも不動に見えていたのが
いつしか山峰の向こうへ姿を隠す
いつまでも いつまでも薄暗がりが あたかも不動に見えていたのが
いつしか闇が訪れる
闇の中に身を置いていると あたかも自分が闇に溶けていく
融けていく 闇の中に
それは悪くない感覚だ
それは心地よい感覚だ
闇とともに融通無碍 行けぬところがなくなる
いつまでも いつまでも 闇そのもになって
やがて来た朝の前で 融けてゆく雪のように
解けていく 解けていく
こぞの年ついぞ水田を見ず
稲穂の実りたるを見しのみ
今年こそ水田を見なければなるまいて
陽気に誘われ田園地帯を
歩いて回った
どこにもそれはなく
乾いた地面が連なるのみ
とうとうこの地も稲作を放棄したか
日焼けした老婦を見つけ問うてみた
あと3週間だよ
カエルが鳴いてうるさくなるよ
6月になったら、梅雨の頃、
水田を見て回りに来なくてはならぬ
失われゆくみずほの国の景観を
記憶に焼き付けなくてはならぬ
人によってはTDLとUSJがなくてはならぬものの筆頭だ
おのれにとっては水田、海岸、砂浜だ
文句は誰にもあるまいて
とある人物の誕生日である
祝いの食卓に
不在となった
飾られた花も
ピカピカに磨かれた皿も
不在をいっそう際立たせる
空っぽの器にやがて
飲み物が注がれ
心に記憶が訪れる
主役不在の誕生日に
満たされるものがあった
空青し 山青し 海青し
blue sky
blue mountain
blue ocean
きょうは緑の日
green day
青から緑へ
愛される色は移ろうけれど
青の深みに我を忘れて
緑の色の豊かさに心は融ける
きょうはみどりの日
blue dayではないんだよ
(望郷五月歌は佐藤春夫が故郷の
紀州を歌ったもの)