特技があれば
尊敬されるし、頼りにされるし、
他人の役に立てる
自分の特技が何かを発見し
努力を重ねる
10歳になったときには
スタートを切ること
特技があれば
尊敬されるし、頼りにされるし、
他人の役に立てる
自分の特技が何かを発見し
努力を重ねる
10歳になったときには
スタートを切ること
ボールペンを使い終わったら
芯をひっこめる
ハンコを使ったら
朱肉をふき取る
体温と気温が拮抗し
厳しい気象が続く
秋霜烈日なんて言い方を思い出す
気温が体温を抜き去ってしまうと
どうなるか
衣服はかえって長袖長ズボンになっていく
ぶかぶかの衣服の方がずっと
涼しくなる
まだ8歳にもならないのに
鮎釣りのうまい男の子がいた
学校から帰りかばんを置くなり
道具をもって川へ走る
家が川のそばにあったら
どんなにいいだろう
男の子はそう思わずには
いられなかった
しかし
今日はまったく釣れなかった
こういう日だってあるもんだと
なかなか思えなかった
肩を落として家に帰った
学校友達というものがなくて
両親が心配していた
男の子は平気だった
野球やゲームに誘われなくてすむのが
うれしかったのである
それに
鮎の釣り方やどこが釣れるか
いろんな男の子からも尋ねられ
丁寧におしえてあげるので
好かれていた
女の子が尋ねることもあった
「お父さんが鮎釣りしたいって言ってるの」
「一緒に連れて行ってもらえないかしら」
次の日曜日
女の子、女の子のお父さんと川へ行くことになった
深夜なのに海を見たい
ただそれだけのためにクルマを走らせた
日本海と入力したら道順はカーナビが決める
国道を走り地方道を抜け
ひたすら走り続け
夜が白むころ
目的地に到着
入江の向こうには水平線が広がり
朝日は雲に隠れていた
6万人のシベリア抑留
その中に父は入っていた
厳寒の地に2年足らず
水の配給は一人コップ一杯ほど
口に含んでうがいをし
うがいが終わると両手に受けて
それで顔を洗った
そう
捕虜同然の者にとっては
水こそ命
定期的にソ連人医師による身体検査が
行われた
素っ裸にして女性医師の前に立たされるのであった
大きなペニスの男を見ると
女性医師がうれしそうな表情をしたという
女も飢えていたのだろう
父は早くに帰国を認められた
やせていたし
私とちがってなかなかのイケメンだったから
女性医師が情けをかけてくれたにちがいない
何十年もたつのに
毎夜水道栓はあいていないか
水は滴っていないか
就眠儀式のように
点検するのであった
水のしたたり落ちていく
一滴一滴を見つめている
ウナギの値段が高騰しているそうだ
そのせいで
今年は牛肉の焼肉をのせたどんぶりを
提供する店がふえたのだそうだ
丑の日が牛の日に
だんだん変わっていく
それを誰も止められない
前かがみになったときに
胃の中のものが口から出てこないのは
なぜだろう
逆立ちしたからと言って
嘔吐しないのはなぜだろう
それはね
胃と食堂の境目には噴門部と
呼ばれる関門があって
ここが閉じられているからなんだ
もし噴門がなければ
大変だぞ
もうすぐ卒業という小学校6年生の終わり頃
どういうなりゆきか
クラス担任の先生に
逆さづりにされた
ここで騒ぐときっと面白がるだろうと
不思議と冷静に読んで
素知らぬ顔をして
逆さづりされたままにしていた
そうすると案の定
まもなく
解放された
帰宅して父にも母にも妹にも
言わなかった
やはり屈辱だったからだ
「おまえこの頃太ったな
それじゃ、ひとつ、体重を測ってやろうか」
こんな流れの、とんでもない成り行きだったと思うのだ
このことを今思い出すのは
今時の学校と父兄との関係の中では
決して許されることではないと思うからだ
教師にとっては
古き良き時代
生徒にとっては
古き悪しき時代だったのである
今日も気温が上がりそうだ
予報では37℃(京都)だという
午後の日差しを思うと気持ちがめげる
朝のうちに出かける用事はすませておこう
まだ8時前だ
そこへ
東京の知人から電話がかかってきた
今月中旬に帰省するから
時間があったら会わないか
いいよと二つ返事で承諾した
ところで
京都は暑いところやなあ
こっちは涼しいで
へえ何度なん
35℃や
急に関西弁になって話が続く
きみはからだが弱いから大事にせなあかんで
水ようけのんどるか
など大きなお世話
しかしだ
35℃が37℃をあわれむのは
目くそ鼻くそを笑う
いや
目くそ鼻くそをあわれむ
だな
ともかくも
目くそ鼻くそには気をつけないとね
一人暮らしはなおさらだ
外出前に点検してくれていた
妻はもういないのだから
仕事場から近いのと
コーヒーがおいしいのとで
ときどき行く喫茶店がある
昨日は暑さにたまりかねて
午後の空き時間に訪れた
シニア二人の男がしゃべりあっているのが
聞こえてきた
「俺んとこは女房が病気でよう、
3度目の入院をしてるんだ。
いつ良くなるかと聞いても
医者は何も言わない」
「そりゃたいへんだな。見舞いに行ったり
しなきゃならないんだろう」
「見舞いに行くのはわけないさ。俺は
ひまだからね。帰り際がつらいのさ」
「そうだよな。暑さだけでもつらいのに
きみは病人を世話しなきゃいけないから
なおつらいよな」
「本当にそうさ。暑いだけならがまんすれば
いいだけのことだ。そのうち秋が来るんだもんな」
こんな話を聞きながら
今ここにいる夏はいずれは終わって
秋に席をゆずる
その確実さにみょうに感心するのだった