伊勢路 はるか(2018年2月14日)

さば街道よりは

高級そうなので

伊勢路を旅することにした

 

鯖には申し訳ないが

伊勢海老の方が上等じゃないか

 

乗り物酔いする身としては

山陰線の横揺れはたまったもんじゃない

伊勢路の近鉄特急は快適にひた走る

 

というわけで

雨の翌日

冬の日に 雪がちらつくそんな日に

伊勢詣でとあいなった

念じることはただひとつ

ただひとつだけ念じることがあったのだ

 

どれほどの時間がたったというのだろう

5歳の自分がその幹にだきついた大木は

どこにあるのだろう

5歳の自分はどこかに行ってしまい

そのお社の

その簡素さが目にしみた

歩くことは生きること(2018年2月14日)

クルマに乗ろうと

運転免許をとった

しかし

クルマを持てずに

紙運転者になっていた

 

時はすぎて

いつのまにか

クルマを運転するようになっていた

 

いつの間にか

自分の車を持ち

日が昇り日が沈み

花が咲き花が枯れるように

玄関を出ると

足はひとりでに

クルマに向かうのだった

 

クルマに乗ることは

生きること

しかし

人が生きるとは

自分の足で歩くこと

両手で荷物を運ぶこと

 

クルマを飛ばすようには

生きられないんだよ

『ローマの休日』(2018年2月10日)

これほど有名な映画を見たのは

最近のこと

そうは言っても父が生前のこと

「初めて見るなあ」と言うと

父はこう言った

「おまえは勉強に忙しかったから

見るひまがなかったんやな」

憐れむかのような口調で

実際いつも追われるかのように

勉強していた

頭のいい人なら短い時間ですむものを

 

グレゴリー・ぺっくはいい俳優だな

ほんとうに

王妃に惚れていたにちがいない

演技ならああはできないな

 

 

 

 

 

乗り物酔いの次の日(2017年11月3日)

頭は重く胃も重く

つらい朝を迎えた

ちょっと身の置き所がない感じで

庭の落ち葉集めをすることにした

10月の台風が杉を揺さぶり

枯れた葉を大量に落としたのだった

作業をしては一休み

一休みしては作業を

繰り返すうちに夕方が来た

ようやく頭や胃が普通に戻ったのだった

 

 

乗り物酔い(2017年11月2日)

島根県松江市で開かれる学会に出席することになった

新幹線で京都から岡山へ

特急で岡山から松江へ

どうってことない時間と距離なのに

頭痛がだんだん強まって

帰り道では頂点に達した

乗り物酔いは苦しいものである

とくに特急に乗ると

決まって起きる

こんなわけで

京都から特急に乗って行くところは

天橋立も金沢も和歌山も

二の足をふんでしまう

誰が知ろうか(2017年11月1日)

それは私に

吐く息にも

吸う息にも

つきまとい

かたときもそばを離れることがない

この私の悲しみは

誰にもわかるまい

 

けれど

誰にもわかってもらえないことを

私は悲しまないのだ

それは私の大切なものだから

誰にも知られず

この悲しみとともに

生きていこうと思う

そういう問題じゃなくて(2017年11月1日)

台風のあと
青空に雲がくっきりと浮かぶ
風とともに
とある男が舞い下りて
こんなセリフを言い捨てて
また風とともに失せていった

背が高いだって
それがどうした

背が低いだって
それがどうした

はげてる
ふとってる
目が小さい
それがどうした

そういう問題じゃなくて
じゃあ
何なのさ

力をつくして生きること
力のかぎり生きること