子どもを産むこと(平成26年11月2日)

入社試験があるわけではもちろんなく

面接試験も観察期間も何もなく

ある日をさかいに母子になる

お互いに相性を確かめ合ったわけではないので

育児がむずかしいのは当然だ

それでも何とか大きな破たんもなく

世間の母子はやっていく

育児が大層疲れるのは当然だ

子はたいていいつも恩知らず

ひとりで大きくなったような顔をしている

しかしそれでいいのだ

アイコンタクト 猫と見つめ合い(平成26年11月1日)

黒と茶と白

まだらの母猫が前足で

窓ガラスをたたく

山裾の町の音もない夜明け

 

外は寒かろうが

年中同じ毛をまとった体で

餌をねだる地域猫に

見かねた女主人が

前夜の食べ残しのさかなの

しっぽを与えると

子猫が3匹、すばやく寄り集まる

 

地域ネコにとって

朝食の始まりは幸福の始まりである

生きることは食べること

こんなにもシンプル

 

小さな部屋かもしれないが

朝日がさしこんでくる

古びた茶碗だが

そそがれた紅茶の色は美しい

ゆですぎて

半熟卵になりそこねたのだが

卵に向かって文句を言うわけには

いかず眉をしかめて

窓の外を見ると

母猫と目が合う

にっこりとはしてくれないけれど