1本のろうそく
1箱のマッチ
浜辺におりたち火をともす
風に吹かれて炎は消える
ふたたびマッチで点火する
やがてろうそくがなくなり
マッチもなくなる
そんな短い時間が大学4年間
司法試験やら公務員試験、
外交官試験やら会計士試験
見向きもしないで
文読む日日
クラブだバイトだ飲み会だ
知ったこっちゃない
学問だけを堪能するのだ
1本のろうそく
1箱のマッチ
浜辺におりたち火をともす
風に吹かれて炎は消える
ふたたびマッチで点火する
やがてろうそくがなくなり
マッチもなくなる
そんな短い時間が大学4年間
司法試験やら公務員試験、
外交官試験やら会計士試験
見向きもしないで
文読む日日
クラブだバイトだ飲み会だ
知ったこっちゃない
学問だけを堪能するのだ
まだ目覚めている
もう眠りに着く
まだ目覚めている
眠りに落ちるあわいの時間に
想い出すことがあった
高校を卒業してまもなく亡くなった
ふたりの学友のことだった
中学一年生のある日に見た横顔を
想い出した
自動車事故に遭ったのだ
また
高校3年生のとき会話したある日のまなざし
海で岩から転落し溺死したのだ
先に逝った二人の友
方言を聞くとほっとする
テレビでときどき各地の方言を
聞くとなぜかほっとする
岡山、広島、徳島、福岡、宮崎
鹿児島、熊本、神戸、大阪、京都
方言には味わいを感じる
NHKの京都のニュースでは
幼稚園児らが「おった、おった、おるで」と言っていた
「いる」が関西弁では「おる」になる
あの子らが学校にあがると
いつしか標準語教育にならされて
関西言葉を忘れていくのだろう
嵐山には飲食店が多くある
ぶらぶら歩きをしていると
いろんな看板が目につく
今日は京やさいカレーの看板を
見つけた
きっとウソなんだろうな
京やさいってきちんと決まっているのだが
きっと手ごろなやさいをみつくろって
京やさいといってるだけなんだろうな
やさいカレーってものが
カレーの上に炒めた野菜か油で揚げたのを
のっけてあるだけだ
いんちき食品なんだ
何だかきょうは
機嫌が悪い
複雑なものは単純に
単純なものは複雑に
波打ち際にたたずむとき
永遠の繰り返しにたたずむ
こんな男がいたという
父母と三人暮らし
1匹の犬をかわいがり
人間の友だちを欲しなかった
義務教育だけは終えて
そのあとは社会というものと無縁に生きた
家にあって父母を助け
犬が死ぬと生き別れのつらさに耐えかねた
健脚だったので徒歩旅行にひとり
しばしば出かけるのだった
学ぶことは限りなくあり
書物に没頭しては時間が足りない
とこぼしていた
父を見送り母を看取り
一人身になっても
生き別れ死に別れするくらいなら
なんという身軽さ
シンプルライフ
ここにあり
JR京都駅から特急に乗ると
行けないところはないくらい
特急は各地は向かう
乗り物酔いさえなければ
舞鶴だって、和歌山だって、金沢だって
日帰りでも一泊でも往復できるのだが
酔い方がただならないので
あきらめるしかない
もうちょっとだけスピードを落としてくれたら
しかし横揺れは防げない
なんとかならないのかなあ
和菓子の包装紙には
小さなラベルが貼ってあり
材料が印刷されてある
さらに小さな字で
手亡
これは何だろう
てぼうと読んで
意味はインゲン豆のこと
あんが豆から作られたというわけだ
白い豆、赤い豆、緑の豆
豆のいろいろをまぶたに思い描いた
ほうれんそうをゆがいて
食べたら
なぜだろう
まるで初めて食べるみたいに
うまいのだ
外は真っ暗
外は雨
こんな風雨の夜に
屋根と壁に守られて
何の文句があるものか
えんどう豆 インゲン豆 さやえんどう
豆野菜の苦さと甘さ
ほうれんそう みずな
葉物野菜の苦さと甘さ
春はこんなふうに
苦くそして甘く
生きとし生けるものに
苦さだけではないことを
甘さだけではないことを
示すのだ
ピーマン2個に
玉ねぎ半個
オリーブオイルでいためて
塩をふる
できあがるのは
ねっとりとそして甘い味わいの
二人分の野菜料理
ありふれた朝の
ありふれた朝食の一品だ
きょうが平凡な一日であることを
予感しながら
ありふれた朝食の時間がすぎていく
きょうという日が
特別な一日にならないことを
言葉にならないような言葉で
願っている