時は過ぎて
今夜
地域ネコが討ち入りする
夜半に集結し
勇ましく行進する
鉢巻をし
のぼりを立て
旗をふって
どこへ
それは計り知れない
おそらくは
食べ物を蓄えている冷蔵庫へ
時は過ぎて
今夜
地域ネコが討ち入りする
夜半に集結し
勇ましく行進する
鉢巻をし
のぼりを立て
旗をふって
どこへ
それは計り知れない
おそらくは
食べ物を蓄えている冷蔵庫へ
いちに いちに
地域ネコが早朝から行進する
きょうは会議があるらしい
家ネコがこたつで寝ている頃
寒風ふきすさぶ中
いちに いちに
地域ネコは行進し会議を開く
あのな
今度からな
12月はな
師走というのはやめてな
ネコぱっしり
いうことにしような
そう猫走
関西弁を話すねこの会議で
こう決められたのだった
その頃
電池を買いに
コンビニへひた走る男がいた
猫走12日の朝のことであった
きょうはバッテリーの日なのであった
なんの役にも立たないけれど
砂浜をひとり歩いてみたい
どこへも行きつかないけれど
あてもなく
砂浜をひとり歩き続けてみたい
思い出の一シーンや忘れれられない言葉の
断片が浮かんでは消え浮かんでは消えていくだろう
浜辺に打ち寄せる波に合わせて
3歳 虹を指さして
にじと言えた
5歳 虹を見ては
駆け出した つかめると思っていた
18歳 虹を
忘れてしまった
20歳 きみがきれいな虹を見たと言った
22歳 虹を見るたび
きみを思い出すのだった
年年歳歳
したいことが後景へ退いて行き
年年歳歳
せねばならぬことが前景へせり出し
年年歳歳
自分の意志はいらなくなり
年年歳歳
運命を知るようになる
自らの力で飛んでいるのか
それとも
風に流されているだけなのか
鳥の飛行は神秘である
この季節
つばめは集合地点に集まり
南へ飛び立つ日を待つ
ようやく一人前になった新米つばめも
初飛行をするのだ
方角、日程、目的地はすでに決まっており
考える余地は何もない
神は私の意志を必要としない
つばめにこそ当てはまる
人もそうでありたいのだが
神は私の意志を必要としない
運命がすべてを決めているのだから
もしきょうが最後の一日だとしたら
ぼくは何をするだろう
いつものように
朝、仕事が始まる
きょうがその最後の日だとしたら
ぼくはどんな働きをするだろう
落ち葉をはいたり
枯葉をみので片付けたりする
秋の最後の日だとしたら
ぼくはどんな気持ちでそうするのだろう
もしきみと話す最後の日だとしたら
ぼくは何を聴くだろう
風が一吹き
もみじの葉が散っていく
はらはらと
別れの時が来たのだ
涙が落ちる
はらはらと
枝に葉が萌えいでた春に始まり
季節をくぐって赤く染まり
その長い旅路を思うとき
いとおしい物であるかのように
落ち葉をほうきではいて集める
何と別れたのだろう
このさびしさは
音もなく現われ
また音もなく消えていく
飛行機雲が好きだ
何も語らずただそこにあるだけの
その主張のなさが好きだ
見る人だけが見上げ
見ない人には知られない
その存在の希薄さが好きだ
それでいて
見上げれば必ず空にある
その確実さが好きだ
虹だとこうはいかない
あてにならない人は
虹のような人と呼ぶことにしよう
庭は狭いのがいい
歴史に残る名園は
広すぎて落ち着かない
猫の額くらいがちょうどいい
一本の樹木
景石がひとつ
苔が少々
後は白い玉砂利
猫がときどきくつろぎに来るような
そんな狭さがいい
もし広い庭なら
春の花が今が盛りと咲きほこり
次には夏の花が力いっぱい咲き続け
そのつらなりでは秋の花が余韻たっぷり咲き乱れ
そのまた次に冬の花が寒風に負けじと咲きこぼれる
一回りすれば
四季を味わえるような
そんなありもしない庭がいい
まことに坪庭こそが理想
二人ならんで腰かけて
ネコ以外ほかには
誰もいない空間で
木を見つめ
石を見つめ
互いの瞳にうつる
雲は流れていく
二人きりの完ぺきな世界