少女だったころの
この人には会ったことがない
どんな人も少女だったころの
しぐさや物言いを
いくつになっても忘れない
首をかたむけるしぐさや
手を動かすしぐさに
この人はいつも
こうやって
生きて来たんだなと
思う
長い年月
少女だったころの
この人には会ったことがない
どんな人も少女だったころの
しぐさや物言いを
いくつになっても忘れない
首をかたむけるしぐさや
手を動かすしぐさに
この人はいつも
こうやって
生きて来たんだなと
思う
長い年月
かなで書いてみる
ひまわり
かたかなで書いてみる
ヒマワリ
またかなで書いてみる
ひまはり
漢字で書いてみる
向日葵
私が好きなのは
ひまはり
牧野植物図鑑では
ひまはりの説明をこう記している
太陽ニ向カイテ廻ルコトナシ
はらはらと花びらが散る感じは
やはり
ひまはりが
ぴったりする
秋が来たら
はらはらと散っていく
向日葵の花びら
はらはらと
流れ落ちる私の涙
夏は来ぬ
旅をするなら
若いうち
あのころは
夏を暑いと感じたことはなかった
海や浜辺や襲いかかる宿題の山山
鈍感だったのか
熱中するものがあったからなのか
海を見ているだけで
浜を歩くだけで
なんともいえないうれしさで
胸がいっぱいになっていた
死が眠りなら
眠りは死だということになる
死は眠り
眠りは死
朝に目がさめるのは死から生還したことになる
そう目覚めは生還のこと
一晩の眠りのあと目覚めたら
一日分のサバイバルを果たしたことになる
明日の目覚めは約束されていないので
目覚めは奇跡である
一夜の眠りに続く朝の目覚め
一日分のサバイバル
最後に指切りをしたのはいつだったろう
最後に指切りをしたのは誰とだろう
何度も何度も指切りをしておくのだった
夕焼け空を振り返るように
いとし子をそうするように
いとしい人をそうするように
夕焼けを抱きしめてみたい
ゆるやかな石段を登っていくと
玄関があり
ピアノ曲のレコードが聞こえていた
チャイムを鳴らすと
ピアノの音がとまり
玄関の扉があけられた
家の主がピアノを弾いていたのだった
レコードではなかったんだ
訪問の男は
驚き
異次元の世界へと
自分が引き寄せられているのを感じた
艸って漢字は何て読む?
くさ
って読むんだよ
ようく見てみると
くさがはえているかっこうをしている
傘がなくてずぶ濡れになった
って話をしていたら
やる気がなくてずぶ濡れになったんだ
という話をされた
傘がないのと
やる気がないのと
どっちが困るか
やる気がないほうがやっぱり困るんだ
新車って
そんなものはないんだよ
そんなはずはないだろ
やっぱり新車ってないんだ
どうして
販売店でお金を支払って
自分の物になったとたん
もう新車ではなくなるんだ
中古車になるんだよ
そうだから
新車を運転したことのある人って
どこにもいなんだ
誰一人新車を運転できないんだよ