雨が近いのだろうか
風が吹く
やんだかと思うと
そっと風がしのびよる
父母が手招きをしている
早くこちらへ
おまえを待ってる
その目は悲しげにも
やさしげにも
見える
早くこちらへおいで
雨が近いのだろうか
風が吹く
やんだかと思うと
そっと風がしのびよる
父母が手招きをしている
早くこちらへ
おまえを待ってる
その目は悲しげにも
やさしげにも
見える
早くこちらへおいで
植物の名前はやさしく美しく
楚々として端麗である
たとえば合歓の木(ねむのき)
たとえば芙蓉(ふよう)
たとえば白樺(しらかば)
たとえば楓(かえで)
繁殖力旺盛にして
四方八方に種を飛ばし
あたり一面の林を作り
やがて森へと繁茂する
何万年何億年の時間をこえて
生き延びてきた
その強さに目がくらむ
雨脚が弱くなり近所の喫茶店へ向かった
禁煙になったせいで客は少なく
雨のせいでいっそう少なく
空席が目立った
窓際の席に座ると
年配の男が二人でやってきた
「わいらはもう生きる力はないけんね」
「そうやもういらんそんなもん」
「そうはゆうてもわいは雨に弱いわ 生きる力はゼロや」
「わいかてそないや」
「晴れの日に生きる力は誰にもあるもんや
雨の日こそ試されるんや」
いれたてのコーヒーの香りがして
三十の坂をこえたばかりに見えるウエイトレスが
足取り軽くカップを運んできた
晴れた日であった
青く澄んだ空はどこまでも果てしなく広がる
こんな日が年に一度はあるものだ
ゆったりと流れる川に腰までひたり
鮎の当たりを待つ時間
風はおだやかに吹き
水面は日を浴びてきらめく
こんな時がまたあるかと思うほど
完璧な鮎釣り日和であった
日暮れて川面に夕陽が差すころ
釣り人の姿はもうなかった
釣り人は帰らなかった
話題の映画を見た
子役のかわいらしいこと
食べるシーンの多いこと
カップめんを食べているのが
貧しさの表現なのか
小さな女の子の母になりたかったのだろうか
演技とはいえ、愛情を感じさせられた。
反面で、小さな男の子お父親になりたかったのだろうけれど
やや表現力がものたりなかった。
ひょうひょうとしすぎていた
生みの親より育ての親
遠くの親戚より近くの他人
そんなあたりまえのことを
思い出さされた
外は雨
篠突く雨が窓ガラスを流れる
眼下に広がる入江が見えない
あなたとわたし
窓際のテーブルをはさんで
話すこともなく
ガラス窓を流れる雨粒を見ている
時折の言葉に耳を傾けて
幼き日の魂を感じてしまう
外は雨
篠突く雨
どんな顔にも幼心が見え隠れする
この人はきっと5歳のころ、10歳のころ
こんな顔つきでこんな表情でいたのだろうな
人はなんと年をとらないのだろう
暑くけだるい昼下がり
意気が上がらず消沈の時間
こんな時があるものだ
こういう時こそ
心をば鬼にして
心のエネルギーをくみ上げる
するとふしぎ
力というものが
よみがえる
サッカー経験もないし
そのことを悔いもしないし
ただの見物人である
屈強の男たちの肉弾相打つ闘いには
心を揺さぶられる
昔語りをしてしまうなら
ベンハーというローマの戦車の
闘いの映画があった
戦車の器械美、男たちの身体能力、
魂をこめた闘い
そんな映画が想い出される
腹いっぱいに食べた
寝ざめようの食糧もためた
穴も掘った
さあ寝るぞ
私や熊になりたい
デッキチェアに陽射しがさす
あたたかな木に横たわり
眠りをむさぼる
日は空高くに止まったかのように
猫の横顔にふりそそいでいる
私や猫になりたい