短い秋(2020年10月14日)

何か特別にいいことがあったわけではない

なにしろ

コロナだからね

そんな夏と

別れはさびしく

夏は立ち去りかねている

酔芙蓉が朝に花を咲かせている

なかなか来ない秋を

待ちわびて

ようやく出会った秋

キンモクセイの香り

今年は二度咲きになりそうにない。

無洗米(2020年10月14日)

娘は関東に

私は関西に

東と西に離れ離れ

結ぶのは LINE

日中はまだ暑いくらいの

初秋の日に

こんなやりとり

「そういえば そろそろお米がなくなる」

お米というのは3か月ほど前に

ふるさと納税で寄付した自治体から

送られてきた米のこと

「そいじゃあ また寄付してお米を

送ろうか」

「無洗米がいいな

 冬は研ぐのが冷たいから」

そのあと ふるさと納税サイトで無洗米を探し

よさそうな自治体に寄付をした

コロナ時代 愛の作法(2020年9月26日)

マスクをつけるのが標準の時代なので

愛の作法も変わってきた

マスクを外すことが

サインとなった

愛ある者同士のあいだでは

マスクを外す

じゃあ

マスクを外そうか

これが親密の言葉になった

愛の作法がひとつふえたわけで

歓迎したい

withコロナ(2020年9月26日)

コロナと共生するのだという

共生というなら

双方に何かしらの得があるときに

言うのではなかったの?

一方だけが得するときには

共生とは言わないんじゃないかな

それでも

with コロナだと人は言う

天にあるコロナが人を支配しているのだから

under コロナ

こういってほしいものだ

ルンバ(2020年9月25日)

名前がおもしろくて

忘れられない

英語では

roomba

roomに

baがついて

roomba

もし寄付を受ける団体を

作るなら

名前は何にしよう

キフミーがいいな

キスミー or キフミー

整理のしかた(2020年9月22日)

紙類、郵便物、雑誌、その他にもいろんな物が

テーブルに所狭しと並んでいて、片付けに困っていた

ふと思いついた

とりあえず、A4サイズの箱に入れてみようと

小さな紙はファイルにはさんで

全部を箱に収めてみた

するとどうだろう

机の上がかたづいた

なんだ

こんなに広かったんだ

遠足の幼稚園児(2020年9月16日)

すっかり観光客の姿が見えなくなった京都

人出が減って寂しいくらいだ

オーバーツーリズムだったあの頃が

かえってなつかしい

遠足にきている幼稚園児の一団を見ている

どこか遠いところから来たとおぼしき

中年女性がいた

涙ぐんでいるような

喜びを

浮かべているような表情で

私も同じ気持ちだったのだろう

ハニージューメロン(2020年9月15日)

メロンの季節が過ぎていく

網目模様のメロンとはちがって

ハニージューメロンという品種がある

負けず劣らず、美味しいそうだ

今年は食べなかった

来年まで待ってみよう

ハニーは蜂蜜、いうまでもないけれど

米国では20歳前後の若さあふれる女性に

年配の女性が「ハニー」と声をかけるのだという

自分たちにもあんな日があったのだと

おそらくは懐かしみながら、

今まさに咲き競うような若い娘に

「ハニー」と呼びかける

国によらず、そういうことはよくあるようだ

今は遠くに行ってしまったわが娘も

どこそこでおばちゃんに声をかけられた

という話を聞かせてくれていた

朝のしたくをしながら

ふと娘を思い出した

男やもめのひがみかな(2020年9月15日)

夫婦連れを見ると

ああいいなあと思う

人目があるからどんな夫婦だって

多少の演技がしているものだ

演技交じりなんだ

そうとは思っても

ああいいなあと思う

今は仲良さそうに歩いてはいても

帰宅したら、喧嘩を始めるかもしれないよ

なんて思いながら

偶然に知り合いの夫婦連れに出会ったりしたら

でもやはり肩身が狭いとも

思うだろう

からごろも 着つつなれにし 妻しあれば

はるばる来ぬる 旅をしぞ思う

妻を思うこんな歌を作ってくれた

歌人を思い出す

秋の朝(2020年9月15日)

日曜日の朝、遠くへ出かける用があって

まだ早い時間に妻と駅に向かった

プラットフォームには一組の親子らしき人物がベンチに

座っていた

私の診療所に通う女子高校生とその母親だった

ピアノ全国コンクールで優勝経験のある生徒で

年下ながら私の尊敬する人物であった

私の妻もピアニストで

自己紹介しておこうねと声を

かけて、その親子に近づいた

すると妻は

驚くほどの

丁重な言葉と態度で

なにがしの妻でございますと

その親子に挨拶をした。

あとにも先にも

妻のそのような姿を見たのは

なかった

上手だなと妻の演奏を

いつも思い、なんで無名なんだろうと

不思議に思うことがあった

上には上があって

かつまた層の厚いのがピアニストの世界で

きっとその女子高校生の方が

ある面では妻よりも上手なのだと思う

無名のままで終わった妻には

何の嫉妬もなかったものと

思う