庭(平成29年2月1日)

古人は言う

庭ほどぜいたくな趣味はない

確かにそうだ 鹿苑寺

将軍の気まぐれが天から落ちる雫のように

池を塔を産みだした

気まぐれは今も人を呼び寄せる

人の波 人の波

 

広い庭はわからない

また古人は言う

狭さの中にこそ宇宙が宿ると

狭き庭の真ん中に置かれた一対の石

石はまことに不思議な物である

 

プレスリー 好きにならずにいられない(平成29年1月14日)

プレスリーほどの歌手だから

フィルムが保存され

はるかな時空を超えて

今ここで目の前で歌唱している彼を感じとる

WISE MEN SAY

ONLY FOOL RUSH IN

愚か者だけがせきたてられ恋にとびこむのだと

賢者はのたまう

けれど けれど

ちょっと馬鹿にならなければ

人は生きていけない

賢者は生きることができない

愚か者の勝ちだ

人生に恋するのでなければ

人は生き延びられない

海馬は眠る(平成28年12月23日)

眠れ 眠れ

太郎の海馬

太郎の海馬の眠るとき

花子の海馬もまた眠る

 

眠れ 眠れ

花子の海馬

花子の海馬の眠るとき

太郎の海馬もまた眠る

 

眠れ 眠れ

太郎の海馬も

花子の海馬も

深い深い底に向かって

眠りの谷に落ちていけ

フィデル・カストロ(平成28年11月26日)

清貧に生きること

難しいが多くの人が成し遂げるだろう

政治家として生きること

それもまた難しいが少数の人は実現するだろう

一国のリーダーであること

至極難しいが一握りの人は成し遂げるだろう

三つを兼ね備えたのは

ただ一人

フィデルだけが成し遂げた

弁論 戦い 体力 知性

人間のあらゆる能力を開花させ

善に用いた稀有の存在

 

 

スマホが歩く観光地(平成28年11月20日)

スマホ片手の旅人は

道をきかなくても迷わない

スマホ片手の旅人は

民家の写真をとりまくる

スjマホ片手の旅人は

立ち止まり自撮りして

しばし自分に酔いしれる

旅人がスマホを駆使するのか

スマホが旅人を駆使するのか

どっちだっていいのだが

 

洞察(平成28年11月15日)

どうさつと言うので

それはちがう とうさつが正しい

年のかさが半分もない若者らを前に

断言した

若者らは顔を見合わせた

 

調べてみると どうさつ

半世紀のあいだ とうさつと読んでいた

洞窟 洞爺湖

胴 桐 銅

どうもあればとうもある

 

翌日 若者らに

前言撤回 妄言多謝

頭取(平成28年11月15日)

とうとり、とうとり

繰り返し口に出したのは

著名な病院長であった

卒業はもちろん東大医学部

えらくなりすぎたためであろう

誰も注意してくれる人がいなかった

 

とーとり、とーとり、とーとり

なぜか笑いたくなった時間であった

 

 

風に吹かれて(平成28年11月13日)

ボブ・ディランはうまい歌を作ったものだ

解答ができない問いから

歌い始めて

風がその答えを知っていると

サラリとかわす

決して答えずして終わりへと持っていく

 

歌だからできること

けれど

解答なき問いはこの世に満ち溢れ

亡霊のように

つきまとう

いっそ

われらも風になりたい

マリンバカ(平成28年11月13日)

マリンバいうて太鼓かと思とった

あんた物知りなわりに知らんのやな

2メートルもある太鼓があるわけないやろ

バカのところがあるんやな

そうやマリンバカなんや

 

しかしな

わては物知りとちゃうで

それやったら何や

知ってることをしゃべってるだけや

知らんことはしゃべれんで

知ってることだけをしゃべってるさかい

物知りに見えるだけなんや

そうかいそうかい

それはそうと

チューバを知ってるか

そんなん知らん

そしたら

チューバカやな