夢まくら2(平成26年8月15日)

昨晩もフロイトが夢まくらに

立ち、こんな話をした

諸君はゲームについて知らないこと

真剣すぎず、不真面目すぎず

その加減が大事なのだ

きみの国の相撲という試合

あの真面目さが頃合いだ

アフリカヌバ族の相撲は片方が負傷するまで戦う

たかがゲームで負傷してはいけないよ

人生そのものも同じだ

真剣すぎても生きずらい

不真面目すぎても生きずらい

 

夢まくら(平成26年8月14日)

フロイトが夢まくらに立ち、

こんなことを言った

人がありありと想像できる時間は

過去1週間と未来1週間だけ

合計2週間だけが諸君の持ち時間だと

1週間以上も前のことは諸君が責任をとれず、

1週間以上先のこともまた諸君は責任をもって

見通すことができない

1週間以上前のしたことしなかったことは

時効にかけなさい

1週間以上先のことも不確かすぎる

目の前の2週間にだけ焦点を当てて

生きるがいい

フロイトはこんなことを

夢まくらに立ち

私に語ってくれた

年寄り夫婦の会話(平成26年8月4日)

( 銀行編)

ピン札ないかな

そんなんあらへんよ

銀行にいかなあかんな

そうやな

自動両替機でいけるやろか

そらむりやな

ピン札は窓口やで

(紙幣編)

一万円札は誰やったかな

あんた福沢諭吉に決まってるやんか

いつ頃からか忘れたな

五千円札は誰やったかな

伊藤博文とちがうか

そんなら千円札は誰やろか

知らん

忘れたな

気になる

財布を見てこよかな

まあええわ

めんどうやな

明日の朝でええわ

それより

誰かてええやんか

わいはそんなん気にしてへんで

翌朝

二人とも

千円札は誰か

財布をみることを忘れていた

電車の車内風景(平成26年8月2日)

住宅に畑に田んぼを両側に

私鉄電車は線路を疾走する

線路はまっすぐどこまでも

(これなら僕でも運転できそうだ)

車内ではスマホをながめて

何やら忙しそうな乗客が席を占める

なかでもひとり若き女性

持参の紙袋からテイクアウトの

のみものを取り出し

一口のんでは

バウムクーヘンの小片を口にいれる

人前で堂々と落ち着き払った飲食は

まるで室内風景のよう

30分の車中時間を有意義に使うには

スマホ、飲む、食べる

三つを同時並行に進めるわけだ

電車は走り人生は過ぎていく

 

カフェにて(平成26年8月2日)

きのう午後の空いた時間

仕事場近くのカフェへ足が向く

離れた席では中年女性が数人

大きな声で話し合い

私はねえ、今度、パレスティナへ

特攻隊に行くんや

様子のいい人が語る

あんたこないだ右肩を骨折したばかりじゃないの

なんてぶっそうなことを言うの

そうなんよ まだ右腕が上がらないけどね

そんな体で何の役に立つの

きかれたくだんの女性いわく

砲弾が落ちてくるとき

こどもの体を私の体でおおうのよ

そうすれば被弾は私の体で

食い止められる

これが私の特攻隊なんよ

話題は次に介護のぐちへと

移っていった

 

 

椅子の消えていく街で(平成26年7月30日)

鉄道駅の昼下がり

改札口の近くでは

重い荷物を片手に

高齢婦人がひとり

人待ち顔でたたずむ

見渡しても椅子はなく

鳥の止まり木ふうの

椅子もどきが3つ

金属製の味気ないしろもの

このごろの鉄道駅ときたら

どこもかしこも椅子がきらいなようだ

人の体は変わらないのに

椅子の激変は目をおおうばかりだ

待って待たされ待ちくたびれて

駅に電車が止まるたび

人恋しさはつのりゆく

インスタントコーヒー(平成26年7月28日)

ネッスルのインスタントコーヒー

出始めのころに飲んだのが

初めての

コーヒー体験

長い年月がすぎて

レギュラーコーヒーをいれるようになった

たいした手間ではないと思うのだが

豆をひく

湯をわかす

湯をそそぐ

これだけのことなのだが

現代人は忙しい

マラソンランナーでもない人までが

歩きながらペットボトルから

水をのむ

立ち止って飲み物を口にすることすら

しなくなったわたしたち

(むせても知らないよ)

 

 

アルゼンチン(平成26年7月28日)

ワールドカップは終わった

アルゼンチンよ

またの名

いとしのアージェンタインよ

きみの名は

銀 シルバーである

だから準優勝が妥当だったのだ

けれどもフランスに行けば

きみは金の代名詞だ

そんなきみに優勝させたかった

(国名を銀と名乗るとは

まさか守銭奴だらけの

国民でもあるまいて)