1分1秒も惜しい朝の出勤前
電話が鳴る
(ワンルームマンションのセールスだ)
ドアチャイムが鳴る
(宅配便だ)
トースターのパンは今にも
焦げそうだ
(すでに焦げてしまった)
トイレにかけこみたくなった
財布が見当たらない
携帯はどこだ
ヤカンの湯は沸騰し
空だきになろうとしている
コーヒーをのむ時間だけは
けずれない
毎日
朝はパニック
1分1秒も惜しい朝の出勤前
電話が鳴る
(ワンルームマンションのセールスだ)
ドアチャイムが鳴る
(宅配便だ)
トースターのパンは今にも
焦げそうだ
(すでに焦げてしまった)
トイレにかけこみたくなった
財布が見当たらない
携帯はどこだ
ヤカンの湯は沸騰し
空だきになろうとしている
コーヒーをのむ時間だけは
けずれない
毎日
朝はパニック
短かった今年の夏
もう終わったのか
まもなく終わるのだろうか
気温が下がるのはうれしいけれど
夏が去るのはさびしい
さようなら夏
夏は来年また来る
けれど
私がまた来る夏に会えるかは
確かかどうかわからない
朝の出勤時間と通学時間
自動車、バイク、自転車
黄色信号ならすっ飛ばし、
赤信号でも走り抜ける
追い越しをかけ
かけられた追い越しをかわす
いらいらした雰囲気が道路にみなぎる
気をつけなくては
事故にまきこまれないように
ぐっと緊張感が高まるときだ
誰かいないのか
早めにゆったりと出勤する者は
あんなに急いで出勤した後で
いい仕事ができるのか
せめて自分だけは朝の疾走に
加わらないように
飛行機雲を見上げたり
街路樹の変化に気がつくような
そんな人でいたい
女三界に家なし
だそうだ
男三千世界に家なし
こんなにも男はつらいよ
男の隠れ家なんてとんでもない
住処すらない者に
隠れ家のあるはずはない
天空に蜘蛛の巣を張るがごとき
至難の業を強いられる
ああ蜘蛛がうらやましい
枝から枝へすばやく作り上げ
だんなよろしく獲物を待つだけ
作っても作っても破壊される巣を
きょうもまた作り続けるのだ
姉のわたしの
たったひとりの弟が
8月に逝った
妻とおさな児とわたしを残して
蝉の鳴く暑い日だった
わたしが思うただひとつのこと
もう一度きみに会いたい
わたしの命の半分を
きみにあげたかった
わたしの子が20歳になるまで
自分の命はそれ以上はいらないから
きみの子が20歳になるまで
生きさせてやりたかった
三十路になったばかりというのに
あまりにも早くきみは逝った
なんて哀しい8月
まだ話があるんだ
帰らないでくれ
ふりきって去って行ったきみ
短かった今年の夏のように
もっとそばにいてほしい
ずっとそばにいてほしい
きみの肩を抱いていたい
来年の夏が来るといわれても
来年また来るといわれても
そのとき
ぼくがいるかどうか
わからないのだから
もっと抱擁していたい
きみとふたりぴったりとくっつていたい
だから行かないでほしいきみ
短かった今年の夏
来年は来る 8月は来る
しかしそれは夏かどうか
雨と湿気
冷気と冷温
寒々とした心で
ぼくはいるかどうかわからない
こんなに哀しい8月が
まためぐりくるとは
6日 長崎
9日 広島
12日 御巣鷹山日航機墜落
15日 終戦
16日 精霊流しに五山送り火
涙なしには見られまい
霊はふたたび還っていく
一族郎党が集う賑わいが
引き潮のように去っていく
広島 豪雨 土石流
8月哀し
お盆をすぎて
海はすでに秋である
行きつけのコーヒー店主の
話しだ
豆を挽き
サーバーに入れて
湯をわかし
ゆっくりと泡立ちを見ながら
注ぐ
ひと手間をかけると
インスタントコーヒーとは異なる
飲み物ができあがる
しかし
コーヒーなんてどうでもいいこと
たかが飲み物なんだから
けれども人生全体となると話しが
ちがってくる
ほんのひと手間をかけるかどうか
その違いが積み重なって
大きな違いが作りだされる
人生における差異とはこのようなもの
夢まくらに立ったフロイトは昨夜
こんなことを語った
正気に生きることはむずかしい
正気とは
昨日は遠く過ぎ去った
だから忘れよう
明日はまだ来ない
だから考えないことにしよう
目の前のたった今に集中すること
これこそが正気に生きる道
フロイトの高弟たちはみな
正気に生きることのむずかしさに苦悩した
ましてわれら凡人が
正気に生きることはむずかしい
まして雨の日に
暗い想念に負けて
ただひたすらに日が照るようにと
願うこと以外何もできないのだった

デラウエアの実ふたつ
つながっているのを見つけた
ダンベルのようにも
酸素原子がふたつ、くっついて酸素分子に
なっている形にも見える