思えばあの頃
楽しい日々だった
言い間違いやら
聞き間違いやら
笑い過ごした日々だった
主はきませり
皺きませり
骨粗鬆症と言えず
こつこしょう症
聞いた方では
骨胡椒症
塩胡椒少々
やっぱり
骨故障症の間違いか
思えばあの頃
楽しい日々だった
笑って過ごした日々だった
自律神経出張症ではないのだよ
自律神経失調症なんだ
思えばあの頃
楽しい日々だった
言い間違いやら
聞き間違いやら
笑い過ごした日々だった
主はきませり
皺きませり
骨粗鬆症と言えず
こつこしょう症
聞いた方では
骨胡椒症
塩胡椒少々
やっぱり
骨故障症の間違いか
思えばあの頃
楽しい日々だった
笑って過ごした日々だった
自律神経出張症ではないのだよ
自律神経失調症なんだ
元日夜に雪が降り始めた
朝目覚めたら 銀世界
こどもらは雪だるまを作る
おとならは道路の雪かきに忙しい
ふんわりと田畑に積もる雪は
陽を浴びて解けるような輝くような
あわいの時にいる
空は青く深く澄みきっている
小倉山中腹にある古刹では
中年に耳を患い全聾の寺男が
除夜の鐘行事をとりしきる
かがり火をたき、京中心部の明かりを
見下ろし、参拝客がひとつ
ひとつまたひとつと鐘をつく
風雨予報のこの夜に
挙行できるか朝から気をもんでいた
予報どおりに
夕方に降りだした雨
豪雨の夜にもやらねばならぬと
住職が命じた
異常気象が日常になり
天候が人の暮らしを変える
異常気象に適応できる者だけが
生き延びる
適者生存
そのとき
強い者は絶え
弱い者が耐える
弱者こそが生き延びる
小倉山古刹の鐘の声
強者必滅
弱者生存の響きあり
秋の夜長の日から
編み物にとりかかり
すでにマフラー
セーター
手袋
完成し
冬の到来を待つばかりとなった
寒波が初めて来たとき
母の顔がほころんだ
きょうこそ
わが作品の出番が来たのだ
ところが
こどもは風の子
半袖で遊びまわるのであった
もっともっと強い寒波が来るように
母は願うのだった
そして観測史上最大の寒波が来た
今度こそ
セーター マフラー 手袋
全部を身に着けて学校へ向かった
帰宅したとき
元の半そで姿
友だちにあげたのだとさ
もし歌を詩を
季節ごとに分けていくと
春の詩が一番多く
その次が夏の詩
そして秋の詩
最後が冬の詩になるのだろうか
たしかに冬は歌う心が冷え切ってしまう
だからといって
冬の詩を歌わなければ
ますます歌心は枯れ果てるだろう
街路にも寺院の庭園にも
雑草すらも枯れ果てて
冬枯れの荒涼とした風景は
歌うにあたいするのだろうか
これ以上落ちることはない
零落の季節は美しくないのだろうか
一事が万事
ずぼらと言われて生きてきた
ただひとつ取り柄は
こたつの魔力につかまえられなかったこと
人は言う
こたつに入ると出られなくなると
これだけは自分に起こらなかった
人は人から学ぶもの
人は人を真似るもの
誰から言葉を学んだか
まさか忘れはしないだろう
真似ることなしに独創は得られない
だからといって近寄りすぎることは
危険だ
屋根を支える4本柱は
離れて立つ
柱と柱
密着しすぎては屋根は落下する
サンタさんが来るまで起きてようね
姉弟はそう決めて
歌を歌ったり絵本を読んで
眠い目をこすりながら待っていた
9時、10時、11時、0時
心配になってきて
家の裏側の大きな川を
窓から眺めて流されている人がいないか
確かめた
きっと道に迷っているんだわ
ふたりは考えた
0時を回り二人は眠りに落ちた
眠る前に手紙を書いた
道に迷ってやっと着いたサンタクロースは
女の子と男の子の枕もとに
置いてある手紙を見つけた
サンタさんへ
私の願いを聞いてくれるのなら
お母さんとお父さんにあげたい物があって
それを私と弟はほしい
お母さんには手袋をあげたいの
手があかぎれて痛いから
お父さんには靴下をあげたいの
足のしもやけがかゆいから
こどもらの希望がかなえられたことは
言うまでもない
ただのガラスの
三角柱にすぎないのだが
いったん光を浴びれば
七色が立ち現れる
長さ1000メートルのプリズムが
もしあるのなら
長さ1000メートルの虹が見えるだろう
こんな夢想をする
風変わりな男がここにいる
家の窓という窓のガラスを
プリズムで作った
虹の家ができあがり
バンダナ長髪の男を見ると
近所の子供らは
七色ハウスのあんぽんたん
とからかうのだった
あなたと私だけの
小さな空間ゆえのくつろぎは
捨てがたいけれど
人にはもっと大きな空間がいる
視界の届くかぎり
地上は200キロ遠方が見え
天空は果てしない高さを望む
人はいかにも微小な存在だが
大空間があればこその
生命体
あなたと私
孤独ではないことを確かめるために
この寄る辺なき大空間がときにはほしいのだ