言い間違いと聞き間違い(平成27年1月8日)

思えばあの頃

楽しい日々だった

言い間違いやら

聞き間違いやら

笑い過ごした日々だった

 

主はきませり

皺きませり

 

骨粗鬆症と言えず

こつこしょう症

聞いた方では

骨胡椒症

塩胡椒少々

やっぱり

骨故障症の間違いか

 

思えばあの頃

楽しい日々だった

笑って過ごした日々だった

自律神経出張症ではないのだよ

自律神経失調症なんだ

 

初雪(平成27年1月2日)

元日夜に雪が降り始めた

朝目覚めたら 銀世界

こどもらは雪だるまを作る

おとならは道路の雪かきに忙しい

ふんわりと田畑に積もる雪は

陽を浴びて解けるような輝くような

あわいの時にいる

空は青く深く澄みきっている

 

 

 

除夜の鐘(平成26年12月31日)

小倉山中腹にある古刹では

中年に耳を患い全聾の寺男が

除夜の鐘行事をとりしきる

かがり火をたき、京中心部の明かりを

見下ろし、参拝客がひとつ

ひとつまたひとつと鐘をつく

風雨予報のこの夜に

挙行できるか朝から気をもんでいた

予報どおりに

夕方に降りだした雨

豪雨の夜にもやらねばならぬと

住職が命じた

異常気象が日常になり

天候が人の暮らしを変える

異常気象に適応できる者だけが

生き延びる

適者生存

そのとき

強い者は絶え

弱い者が耐える

弱者こそが生き延びる

小倉山古刹の鐘の声

強者必滅

弱者生存の響きあり

 

編み物(平成26年12月28日)

秋の夜長の日から

編み物にとりかかり

すでにマフラー

セーター

手袋

完成し

冬の到来を待つばかりとなった

寒波が初めて来たとき

母の顔がほころんだ

きょうこそ

わが作品の出番が来たのだ

ところが

こどもは風の子

半袖で遊びまわるのであった

もっともっと強い寒波が来るように

母は願うのだった

そして観測史上最大の寒波が来た

今度こそ

セーター マフラー 手袋

全部を身に着けて学校へ向かった

帰宅したとき

元の半そで姿

友だちにあげたのだとさ

 

冬の詩(平成26年12月27日)

もし歌を詩を

季節ごとに分けていくと

春の詩が一番多く

その次が夏の詩

そして秋の詩

最後が冬の詩になるのだろうか

たしかに冬は歌う心が冷え切ってしまう

だからといって

冬の詩を歌わなければ

ますます歌心は枯れ果てるだろう

街路にも寺院の庭園にも

雑草すらも枯れ果てて

冬枯れの荒涼とした風景は

歌うにあたいするのだろうか

これ以上落ちることはない

零落の季節は美しくないのだろうか

 

 

学ぶこと(平成26年12月27日)

人は人から学ぶもの

人は人を真似るもの

誰から言葉を学んだか

まさか忘れはしないだろう

真似ることなしに独創は得られない

だからといって近寄りすぎることは

危険だ

屋根を支える4本柱は

離れて立つ

柱と柱

密着しすぎては屋根は落下する

道に迷ったサンタクロース(平成26年12月24日)

サンタさんが来るまで起きてようね

姉弟はそう決めて

歌を歌ったり絵本を読んで

眠い目をこすりながら待っていた

9時、10時、11時、0時

心配になってきて

家の裏側の大きな川を

窓から眺めて流されている人がいないか

確かめた

きっと道に迷っているんだわ

ふたりは考えた

0時を回り二人は眠りに落ちた

眠る前に手紙を書いた

道に迷ってやっと着いたサンタクロースは

女の子と男の子の枕もとに

置いてある手紙を見つけた

 

サンタさんへ

私の願いを聞いてくれるのなら

お母さんとお父さんにあげたい物があって

それを私と弟はほしい

お母さんには手袋をあげたいの

手があかぎれて痛いから

お父さんには靴下をあげたいの

足のしもやけがかゆいから

 

こどもらの希望がかなえられたことは

言うまでもない

 

プリズム(平成26年12月23日)

ただのガラスの

三角柱にすぎないのだが

いったん光を浴びれば

七色が立ち現れる

長さ1000メートルのプリズムが

もしあるのなら

長さ1000メートルの虹が見えるだろう

こんな夢想をする

風変わりな男がここにいる

家の窓という窓のガラスを

プリズムで作った

虹の家ができあがり

バンダナ長髪の男を見ると

近所の子供らは

七色ハウスのあんぽんたん

とからかうのだった

 

 

起きて一畳寝て半畳(平成26年12月23日)

あなたと私だけの

小さな空間ゆえのくつろぎは

捨てがたいけれど

人にはもっと大きな空間がいる

視界の届くかぎり

地上は200キロ遠方が見え

天空は果てしない高さを望む

人はいかにも微小な存在だが

大空間があればこその

生命体

あなたと私

孤独ではないことを確かめるために

この寄る辺なき大空間がときにはほしいのだ